銀魂

□貴方は私を愛せない…
1ページ/1ページ

貴方は私を愛せない…


土方はいつもの様に書類を片付け市中見回りをしに歌舞伎町に来ていた。

見回りも大体終わり帰ろうとする土方はふと自分の名を呼ぶ声に気付き相手を見詰めた。
そこにいたのは紛れも無い愛しい恋人、銀時。

「あれぇ多串君?何やってんの?仕事?」
ふざけた様に尋ねる相手に土方は軽く肯定の返事をした。
「ねぇ多串君。ちょっと来て?」
「ぇ?ってオイっ!」
銀時は腕を引かれ路地裏に連れ込まれ慌てる土方の可愛い姿に昔の恋人を重ねている自分に気付きふっと自嘲の笑みを浮かべた。
「おい!坂田!何すんだよ!」
「何って…多串君と会ったの久しぶりだから銀さん多串君に触りたくなっちゃった!」
路地裏に連れ込まれ慌てた土方は顔を真っ赤にして銀時を上目使いで睨んで抗議の言葉を口にするが銀時は悪戯っぽく告げニッコリと微笑んで見せた。
土方は更に顔を赤くして抵抗しようとするが銀時にその細い腕は簡単に押さえられ下に下ろさせられた。
「大丈夫。いくら銀さんでもこんな所でそんな事までしないから。」
そう言うと真剣な顔をして土方の薄く整った赤い唇に自分のそれを触れさせ、優しい口付けをして相手を見つめ口を開いた。
「愛してるよ。」
銀時は何も言わずただ切なげな表情を浮かべる土方にもう一度口付けしその場を去った。

残された土方はその場にしゃがみ込んで苦しそうに口を開いた。
「お前は、俺を愛してなんか…ないじゃねぇか…」
土方は自分が昔の恋人と重ねられているのに気付いていた。
それでもあの死んだ魚の様な目をした男を愛していたから、いつかは自分を見てくれると信じて身体を重ねてきた。
「お前は俺を見てくれてない…俺を見て。名前を呼んでくれよ…」
そう静かに叫んで泣いた。
その黒真珠を嵌め込んだ様な漆黒の瞳から美しい雫を流して…

貴方は私を愛せない…










fin.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ