三国無双短編夢

□星の詩(ヒロイン視点)
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例え私が死んでも変わりはいくらだっているわ。でもね、貴方と殿の変わりになる人はいないの。

貴方達は天下をとるべき人達。その貴方達の身代わりになれるのなら、武人としても…女としてもこれ以上の幸せはないわ。

だけど一つだけ…心残りがあるの。それはずっといっしょにいたから…これからもずっといっしょだと思っていたから…。だから貴方に伝えられなかった言葉なんだ。

私は死んでいく人間だから貴方にこの想いを伝えることはもう…叶わない。お人好しな貴方を見守ることも、冗談言って二人で笑いながら歩くことも、二人だけの秘密の場所で昔話をするのも…貴方をこの手で抱きしめることももう何もできない。

けど…この空に輝く星達に願いをこめることくらいなら今の私にもできるわ。だからお願い、私の変わりにこの想いを伝えて。愛するあの人への最後のこの詩を。










最近私は何か違和感をかんじていた。それは殿と曹昂殿が許昌をたったあの日からずっと…胸が締め付けられるような、体中が何かに刺されたような。しかしどんな医者に診てもらっても何も体に異常はなく、訳の分からぬ不安に襲われた。

別に病や死が怖いというわけではない。
戦にでた時だってこんな恐怖を感じたことはない。なのに何故?何故私はこんなにも恐れているのか…。

不安と恐怖で夜も眠れなくて、ふらふらと部屋をでた。ふと空を見てみると、そこには果てしない大空に輝きを放つ星星がまるで私のことを心配して語りかけているような…そんな気がした。しかしそんな時私は信じられないものを見てしまった。

空に一際輝く一つの蒼い星…あれは殿の将星である。そしてその隣にある少し小さくでも他には負けない光を放つ星。それは曹昂殿の。それらが…輝きを失いかけていたのだった。






『…私の不安はこれだったの?』






いてもたってもいられなくなった私は、腰に剣をさして走った。勿論向かうのは二人のもと。でも私は急ぐあまり一つだけ見落としていたことがあった。

まるで二人の将星を庇うようにいる私の将星…それがもう…輝きを失っていたことを。



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