三国無双短編夢

□星の詩
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私が君や典イ殿のように才能があったなら、君を失うことなんてなかっただろうに。君があの時何を思って私と父上を逃がしたか。いつもと変わらず真っ直ぐで…強い光を放ったその瞳が最後に何を映したのか。そして最後の…今でも決して忘れることのできない笑顔で私に向かって言っていた言葉…炎の燃える音や兵士の雄叫びで聞くことのできなかったその言葉…。

今となっては何も分からない。

ねぇ名無しさん…。私達はずっといっしょにいたけれど、君にまだ何も伝えてなかったよね。だから今この空を輝く星に願いをこめて伝えるよ…。








宛を治める張シュウが降伏した。それで
父曹繰と護衛の典イ殿と私は宛にきていた。しかし私達は甘かったのだろうか。まさか張シュウが奇襲をかけてくるなど考えてもいなかった。父が手を出した女性が原因らしい。そんなことを考えている場合ではない。とにかく今は父をここから逃がさなければならない。父はここで死んではならない。典イ殿は既に部下達を連れて敵兵を食い止めるために武器を持って向かっている。私も典イ殿と共に行きたいが、父を城門まで逃さなければならない。






「父上!!ここは典イ殿に任せて私達は行きましょう!!」


「……ああ」









そして道行く敵兵を斬りながら進んでいた私の目に一人の人物が見えた。遠くのほうから馬を連れたその人は許昌にいるはずの我が軍の将で私のずっと恋い焦がれる思い人………名無しさんだった。






『殿!!曹昂殿!!ご無事ですか!?』


「名無しさん…?なぜお前がここにいるのだ!?」


『先日星の動きを見ていましたら…殿に何か異変があるという結果がでましたので…不安になってしまいついきてしまいました。』


「でもよかった…これで三人で逃げれるよ。名無しさんの連れてきた馬と私の馬を合わせれば馬が三頭いるから。」


『……それが』






名無しさんは少し目をそらしてから自分の乗っていた馬から飛び降りた。






『実は曹昂殿の馬は既に敵兵の手に渡っております。この先の道も既に…』


「そ…そんな…」


『しかし私が裏道の敵兵を倒してきました。殿と曹昂殿はそこからお逃げください。』


「しかし…馬は二頭しかおらん。私と子修が乗るとしたら…名無しさんはどうするのだ!?」


『私は……ここで敵兵を足止めします。』

「っ…!!駄目だ!!それなら私が…」






曹昂が剣を持とうとしたその時、その動きは名無しさんによって止められた。






「…名無しさん!?」


『曹昂殿…貴方程度の剣の腕では足止めなどできません。貴方はここで犬死にしたいのですか?』


「だが!!」


『私は殿に従っていくつもの戦をこの剣と腕で生きぬいてまいりました。貴方とは経験も違うのです。貴方より私が残ったほうが良策なのですよ。』


「なら私も残って…」


『いい加減にしてください!!』


「っ…」


『貴方が今しなければならないことは、ここに私と共に残ることではなくて殿を…曹繰様を無事に逃すことでしょう?なら生き延びて…殿をお守りすることが貴方のなすべきことではないのですか?』


「…」


『殿…敵兵が既に近くまできております。早くお逃げください。』


「…分かった。」


「父上!?」


「子脩よ…このままここにいては我ら三人敵兵に捕まるだろう。お主は名無しさんの思いを無駄にしようというのか?」


「しかし…」


「あそこだ!!曹繰がいたぞ!!」






曹繰が馬に乗るとすぐに敵兵が現れた。それを見た名無しさんは曹繰の馬を棒で叩いて走らせた。そして曹昂に馬の手綱を渡したのだった。







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