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□request No.4
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「今の俺、肉体的に念を習得する前の12歳の頃に戻っちゃってるんだよね。なんかよく分からないけど、そういう念使いに不意討ち喰らってさ。まあ、クラピカには関係ないよね…念を使えない俺が誰にやられようと」
とぼとぼと玄関に向かうクロロの独り言にクラピカがぴくりと反応する。
「不意討ち?お前が…か?」
「そんなことだってあるよ。俺も人間なんだから」
「事情はともかく、念を掛けられたのならば、私の鎖を解いた時の様にさっさと除念すればよかろう。どうせ除念師の能力だって盗んであるのだろうが」
クラピカが撫然とした態度で言い放つと、クロロが弱々しげに振り返りぽつりぽつりと弁明する。
「だから言っただろ?今の俺は念を習得する前のほんの12歳の子供なんだって。スキルハンターを発動できないから自分で除念は出来ない」
「ではまたヒソカにでも頭を下げて、新しい除念師を連れてきてもらうんだな」
ヒソカの名前を出した途端、クロロが、ひっ、と小さく息を飲み、ビー玉のようにまんまるな瞳を更にうるませた。
「可愛い顔して、なんて恐ろしいことを言うんだ、クラピカ。只でさえあんな変態との接触は避けたいのに、念も使えないこんな姿でヒソカに頭を下げろだなんて。君は愛しい恋人の貞操がどうなってもいいのか」

何が愛しい恋人の貞操か。
人の休暇の度に勝手に部屋に押し掛けては、愛してるだの、君は俺の半身だなどと訳の分からないことをぬかして、なし崩しに事に及んで来るような男に貞操もクソもあるものか。
憎々しげにクロロに視線をやるも、そこに佇むのは、何だか激しくクラピカの庇護欲をくすぐる少年でしかなく。

確かにこの姿でヒソカの元へ行けというのは少々酷だろうか。
大本命の筆頭にゴンを掲げる、老若男女何でも来いなヒソカにとって、12歳のクロロはまさにストライクゾーンど真ん中であろう。
普段のクロロがどんな酷い目に合おうと知ったことではないが(そもそもクロロが一方的に酷い目に合うことなんてありえないだろう)、こんないたいけな少年が自分のせいで路頭に迷い、更にはヒソカによって…などと考えると、クラピカはどうにもいたたまれない気持ちになってしまった。

「…その念はどのくらいで効果が切れるのだ」
「きっかり24時間。この姿になってからすでに3時間が経過してるから、あと21時間で元の姿に戻れる」
クロロのすがるような視線を感じながら、クラピカは忌々しげに時計に目をやった。

―現在の時刻は午後11時34分。
取りあえず今夜は直ぐにでも休むつもりだったから、クロロの存在など無視してさっさと眠ってしまえばいいだろう。
流石のクロロもこんな子供の姿になってまで、よからぬ行為には及ぶまい。
目が覚めてからの時間は読書にあてて、明日の午後8時34分になったら、さっさとクロロを追い出し、残りの休暇を満喫すればいい。
別に情けをかけてやる訳ではない。
断じてない!
こんな状態のこいつが、私の預かり知らぬ所でどうにかなっては面白くないからな―

そこまで考えてクラピカは渋々口を開いた。
「…念が解けるまでだぞ」
「えっ?!」
「元の姿に戻り次第、直ぐに出ていってもらうからな」

そう告げたとたんクロロが飛びかからんばかりの勢いで抱き付こうとしてきたが、今度は上手くかわすことが出来て、クラピカはほんの少し嬉しかった。

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