sweets,Inc.

□creamy day,more
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シャツの裾からクロロの大きな手が滑り込んで素肌に触れ。
そこで初めてクロロが求めているものと、自分の僅かばかりの知識が一致して。
私はこれ以上ないほど狼狽えた。

だってそれは私には無用なもののはずだと。
本能に基づく、子孫を残すための行為は、実を結ぶことの出来ない私の体には意味がない。

だから。
クロロとずっと一緒にいることは出来ないと。
私では彼を満たすことは出来ないと。
そう覚悟を。


「…っ」
服の中に侵入したクロロの手が、音もなく這い上がり、申し訳程度の質量しか持たない私の胸に触れそうになって、思わず両手で制した。
服の上から捕まえた彼の手が思いの外熱を持っていて、どうしたらいいのか分からない。

「どうしたの?」
私の髪に唇を寄せていたクロロがいぶかしげに顔を上げ、囁くように問いかける。
「いや、たぶん、お前は色々な経験があるだろうし、私の体では満足できないのでは、と」
「どうしてそんなふうに思うの?」
「同じ年頃の同性と比べて胸囲も腰回りも足りないし、子供のようなのだ。標準的な発達をしていないと思う。きっとお前もがっかりする」
こんな体に性的な魅力を感じる男などいるはずがない。
努めて冷静にそこまで言ったところでクロロが苦笑した。
「色々言う前に全部俺に見せて。ちゃんと触らせて。そうしなかったら何にも分からないよ。ほら、手を離してごらん」
静かで穏やかな微笑みの奥に、じりじりとした熱を宿した目で。声で。
そんなふうに言われたら。
どう抗えばいいのか分からなくなって、私はもうクロロの言いなりになるしかなかった。

自由になった右の手のひらが、ふわりと私の脇腹を撫で上げ、指先で何の装飾もない下着の縁を辿る。
利き手ではないはずの左手が器用にシャツのボタンを外して行くのを見て、いたたまれなった私は固く目を瞑った。

「部屋を、暗くしてもらえないだろうか?」
最後のボタンに指がかかったところで耐えきれなくなり、目を閉じたまま懇願してみた。
語尾はかすかに震えて掠れたけれど、言いたいことはきちんと伝わったと思う。
寝室の明かりは、読書するには暗すぎるが互いの顔を見るには十分で、それが私には辛かった。
せめて窓からの月明かりだけにしてもらえれば。

それなのに。

「だめだよ」
あっさりとクロロは言う。
「本当はもっと明るくしたいくらいなのに。君はね、自分の価値をちゃんと知るべきなんだ」
優しい言い回しなのに拒否を許さない。
有無を言わさずシャツの合わせを開かれて、どんな顔をしていたらいいのか。
自分の顔を両腕で覆い隠すのと同時にクロロの深いため息が耳を刺して、私は生きた心地がしなかった。



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