sweets,Inc.
□cherry tower:side M
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まさか…ね。
金髪の少女なんてこの街には数えきれない程いる訳だし。
氷が溶けて薄まってしまったアイスモカを飲みながら、アタシは少女に背を向けた。
だってアタシには関係ない。
関係ない…けど。
クロロの情報網は半端じゃない。
そしてクロロのこの少女(が本物なら)に対する思い入れも、たぶん半端じゃない。
運命の出逢いとか真実の愛とか、そんなのは知らないけど、今まで適当に色んな女達といい思いをして来たクロロとは確実に違う。
それくらいはアタシにも分かる。
そんな少女がこんな所で下らない連中にナンパされたと知ったら。
そのすぐ近くにアタシがいたと知ったら。
そしてアタシは分かってる。
こういうときのアタシの勘は外れたことがない。
ああもう、クロロが散々言っていた天使様の名前は何だった…?
「…クラピカ?クラピカじゃない?」
突然名前を呼ばれた少女は、呆気に取られた様にアタシを見上げた。
「アンタ、クラピカでしょ?」
「あ、ああ、そうだが…」
ビンゴ。
「やだ、久しぶり。こんな所で何やってんの」
「いや、あの、貴方は…」
「君、この子の知り合いなの?君も可愛いな〜って思ってたんだよね」
「これで人数も丁度いいし、一緒に遊びに行かない?」
思ったとおりナンパ男はあっさりアタシに食い付いて来た。
バカな奴等。
「別に遊んであげてもいいけど、アンタ達この辺詳しいの?」
「ああ、俺達このすぐ近くに住んでるし」
「いっつもこの辺で遊んでるし、な」
だったらきっと色々知ってるはず。
新規参入が難しいと言われてたこの界隈で、次々と飲食店経営を成功させたクロロの噂を。
たぶんそれはいい噂ばかりじゃないはず。