sweets,Inc.

□cherry tower:side M
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「…いや、待ち合わせではないが」
「あ、そうなんだ。じゃあ俺達と一緒に遊びに行かない?いい店知ってるんだ」
「何故私が初対面の貴方達と遊びに行かなくてはいけないのだ?」
「は?何かキミ面白いね〜」
「そんなに固く考えないで一緒に美味しい物でも食べに行こうよ」
「いや、食事なら間に合っているし、やらなくてはいけないことがあるので…」
「あ、もしかしてあそこの大学の学生…の割には若いよねぇ」
「まさかまだ高校生とか?」

ひゃはは、と笑う声が耳障りだった。
ちらりと後ろを伺うと、想像以上に軽そうな二人組がへらへらと立っている。
女の方も女の方だ。
その気がないならもっとはっきり断ればいいのに。
小さな苛立ちを感じながら二人の男に挟まれている女に目をやって、アタシは心底後悔した。
そこに座っていたのは、女呼ばわりするには随分と幼い、けれどもやけに落ち着いた雰囲気の少女で。
若い女がちやほやされるのは、別に今始まった風潮じゃないし、若い女を好む男を責めるつもりもない。
そんな奴、アタシの周りにも沢山いるし。

今問題なのはそんなことじゃない。

アタシは一旦雑誌に視線を戻して、もう一度ゆっくり少女を伺った。

―透けるように光を弾く金の髪。毛先の方にだけゆるく癖があって優しい曲線を描いてる。
染めたんじゃない証拠に、長い睫毛まで一段濃い金色で、大きな真ん丸の瞳はこっくりと深い蜂蜜色。
熟れる直前の桜桃みたいな唇はみずみずしくて艶やかで。
その姿形を構成する各々のパーツはひどく甘くて幼げなのに、何故だか全体の雰囲気はひんやりと涼しげで近寄り難くさえあって。

先日事務所に顔を出した時、延々と聞かされたクロロの「天使様」の話が甦る。
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