sweets,Inc.
□brilliant fruits
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「あの…すみません」
本を読み始めてどれくらい経っただろうか。
ふいに声を掛けられて、俺は反射的に溜め息をついた。
だってそうだろう?
こんなに人気のない所をわざわざ選んでいるのに、俺には一時の静穏も与えられないのか。
俺はただ静かに本を読みたいだけなのに。
無視してしまおうか…それも大人気ないな。
魅力的な男性に惹き付けられて声を掛けずにいられなかった女性を邪険に扱うほど、俺は子供じゃない。
相手を傷付けずスマートに遠ざけるセリフを二つ三つ頭で反芻しながら顔を上げた。
そして俺は。
俺は…何を言うつもりだったのか。
「せっかくの読書中に突然申し訳ありません」
顔を上げたまま固まってしまった俺が怒っていると思ったのだろう。
その少女は心底申し訳なさそうに頭を下げた。
綺麗な声。金の髪。
美しい女性を見て天使の様だなんて陳腐な表現をするのは、語彙の乏しい底の浅い人間だと思っていたけれど…今俺の目の前に立っているのはまさに天からの御使いで。
先週手に入れた画集に、この子によく似た天使が載っていたな。
あれは誰の作品だったか。