sweets high

□帰宅
1ページ/3ページ


ガレージで車のエンジンを切りながら時計に目をやると10時を少し過ぎたところだった。
毎週恒例の馬鹿騒ぎは、とっくに始まっている頃だろうか。

誰が呼び掛けるわけでもなく。
金曜の夜は俺の家で飲む、という悪しき習慣が定着して随分経つ。
まあ、“悪しき”なんて思うようになったのはクラピカと同居するようになってからで、それまでは俺もそれなりに楽しんでいたんだけれど。


この家に来たばかりの頃、無遠慮で乱暴な言葉がぽんぽんと飛び交う飲み会が始まると、クラピカは無言のまま自室に籠った。

それが、いつからだったろう。

そう、やっぱり今日みたいにくだらない雑務が長引いて、俺の帰りが遅くなった金曜だったと思う。
帰宅してガレージからクラピカの部屋を見上げると、いつもならどんなに遅くなろうと俺が帰るまで必ずついているはずの優しい明かりが消えていて。
不審に思いながら家に上がった俺が見たのは、リビングの片隅で不機嫌そうに本を読んでいるクラピカと、馬鹿みたいに騒ぎまくっている相変わらずの面々だった。
聞けば、マチにしつこく誘われたから、と渋い顔で答えたが、何故だかそれ以来クラピカも金曜の飲みに加わるようになってしまった。(正確に言えば“飲む”訳ではなく、その場にいるだけだが)

まあクラピカとアイツらが仲良くするのは悪いことじゃない。
板挟みになるのが苦な訳ではないが、これからも一緒に暮らすことを考えれば、互いにストレスが少ないのは良いことだと思う。

ただ俺が心配なのは。
今日みたいに俺がいない隙に、誰かが上手いことたぶらかしてクラピカに酒を飲ませ、俺も見たことのないような可愛い顔を勝手に拝んだり、あんなことやらこんなことやらの如何わしいことをしてしまったりしないか、ということなのだ。
今日だってそんな危険なことになっていないと、誰が言い切ることが出来ようか。

俺は足早にポーチを抜け、玄関のドアを開けた。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ