sweets,Inc.

□pumpkin pie
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その日、クロロの機嫌はすこぶる悪かった。


俺の店ではハロウィンの当日、仮装パーティーをやるのが恒例になってて、自慢じゃないけどこの界隈でも有名なイベントの一つになってる。
最初は常連客やスタッフのお遊びだったのが、派手好き・遊び好きなクロロの参加で一気に本格的になった。

クロロが来てくれたらそれだけで盛り上がるし、人は集まるしで、この日の売上は毎年桁違いになるから、俺としては非常にありがたい。
クロロはクロロで結構美味しかったんじゃないかな。
去年なんかは、ジョニー・デップも真っ青なパイレーツファッションで決めて、女の子達にきゃあきゃあ言われまくって、結局、一番セクシーな狼耳の美女(俺も狙ってたのに)をお持ち帰りしてたし。


だから今年はどうしようか、と少々頭を悩ませてたんだ。


クラピカと知り合って以来クロロは、あの取っ替え引っ替えは何だったんだっていうくらい、純情可憐な恋する乙女みたいになっちゃって、プライベートはもちろん仕事でも、よっぽど必要がない限り異性と関わらなくなった。
今日だって本当は来たくないって散々ごねられたんだけど、クロロ目当ての上顧客が沢山来るし、新しいコネクションに繋がる大事な日だからって、無理矢理パクに引きずって来てもらった。
たぶん、社長としての仕事をきちんとこなさなければ、クラピカに言いつけるとか何とか言われたんだと思う。


申し訳程度に吸血鬼の仮装をして、絵に描いたみたいな笑顔を振り撒くクロロは、それでもなかなか魅力的で、ぱっと見、機嫌が悪いなんて誰も気付かないだろう。
そういうところは流石だと思う。


ただ、俺を含めた昔馴染みの面々は、いつクロロがキレるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。

何でかって?

クロロに十も年下の恋人が出来たって話は、顧客の間でもかなり有名になっちゃっててさ。
クロロ本人が隠すどころか、聞かれもしないのにぺらぺら喋るんだから仕方ないけど。
ただ俺がマズイなって思ってたのは、それがいつものゲームみたいな関係じゃなく、相当本気で入れ込んでることまでが、随分広範囲に知れ渡っちゃったことなんだよね。
そんな噂が広まってクロロ狙いの女性客の足が遠のいたら、こっちは商売あがったりなんだよなあ、って。

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