sweets,Inc.

□candy girls
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「で、クロロって上手なの?」

思わず一口目のビールを吹き出してしまった。
シズクの話はいつも突飛で脈絡がなくて、そんなのには慣れてるはずなんだけど。
質問された方のクラピカはクラピカで、上手とは何のことだ、とか真面目に返してたりするし。
つくづくツッコミ不在のボケ同士の会話は恐ろしいと思う。

「何のことって、そんなのわざわざ言わなくても分かるでしょー、ねえマチ?」

一応シズクにも恥じらいはあるらしい。
だからってアタシに振るな。
無視してこぼしたビールを拭いていたら、新しい布巾を取ってくれたクラピカまでもが、何のことだ、とアタシをくるんとした瞳で見詰めてくるから、何だかもう自暴自棄な気分になって、セックスのことでしょ、と言い放ってやった。

「せ…っ?!」

今度はクラピカがテーブルの上のミネラルウォーターを派手にひっくり返して、自分の服やらラグやらを水浸しにした。

「ちょっとあんた達、何してるの?クロロじゃあるまいし、仕事以外の事で私を煩わせないでよね」

軽く摘まめるものを用意していたパクがキッチンから顔を覗かせて、びしょ濡れになったクラピカを見て、あーあ、と眉を寄せた。

「私の部屋着貸してあげるからちょっといらっしゃい」

何だかんだ言っても、パクは面倒見がいいし優しい。




「まったく何でこんなことになったの」
濡れたラグやテーブルの上を片付け一息ついて、乾杯をし直したところでパクがアタシ達三人をぐるりと見回した。
パクのキャミワンピを着て居心地悪そうにしていたクラピカが、その話はもうやめろ、と言うのに被せて
「ただクロロは上手なのかって聞いただけだよ」
シズクがしれっと言って退けた。

だってほらこの雑誌の特集になってるから、とシズクがテーブルの上に広げて見せたのは、パクが毎月購読しているファッション誌の中の一冊だった。

「ああこれね。企画としてはマンネリよね、セックスは女も楽しむべきだとか女の方がリードしろとか」

要するに、恋人同士のセックスに関する開けっ広げなアンケートやインタビューを、もっともらしくまとめた特集らしかった。

「クロロって経験は多そうだけど、経験とテクニックは比例するものなのかなーと思って」

何にも考えてなさそうなのに、よりにもよって何でそんな疑問を持つのよ、アンタは。
アタシは呆れて、パクが作ってくれたポークリエットのカナッペを一口かじった。
どうせパクも、くだらない、と一蹴するだろうと思ったから。


思ったのに。


「で、実際どうなの」

ああ、食いついちゃうんだ、パクも。

「そっそんなこと知るかっ。上手いとか下手とかそんなこと考えてしたことはないし、そもそもクロロがどうかなんて、他に比べる対象を知らないし…」
「ええっ、じゃあクラピカにとってクロロが最初で最後の相手になっちゃうってこと?!」
パクが心底驚いて見せるから


「まだ若いんだしクロロが最後かどうかは分かんないじゃない」


思わず。

無関心を装うつもりが口をはさんでしまった。


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