sweets,Inc.

□shaved ice
1ページ/2ページ


クロロの携帯が軽やかな音を立て、メールの受信を知らせた。
これは確かクラピカ専用の受信音のはず。

珍しいわね。

クロロの仕事中にあの子が連絡を寄越すなんて。
よっぽどの急用か何かかしら。


「ぐぁ」


私の目を盗むように(別にメールのやり取り位、常識的な頻度であれば咎めたりしないのに。まあ、仕事中のメールや電話は控えるようにって、クラピカの方から散々言われてるんだろうけど)驚くほどの素早さで携帯を開いたクロロが、何とも変な声…というか音を発した。

せっかく有能な秘書として、素知らぬふうを装ってあげたのに、社長にそんな奇声を上げられたら、声をかけないわけにはいかないじゃないの。

「…どうかしましたか?社長」

仕方なしに書類から顔を上げると、携帯を手にしたまま青い顔でフリーズしているクロロが、それでも何かを言わんと必死に口をぱくぱくさせていた。

まさか、クラピカの身に何か?
嫌な予感が走る。

「見ても構いませんか?」
返事を待つのももどかしく、なかば取り上げるようにして小さな液晶画面に目を落とすと。
そこには。

“すんげ〜暑いけど、めちゃくちゃ楽しんでるよ。クローズまで遊ぶから遅くなるかもしんないけどご心配なく”

ちかちかした絵文字に装飾されたちょっと頭の軽そうな本文に。
大きなピンク色のリボンと白い猫耳のついたカチューシャを、金色の頭上に乗せたクラピカの画像が添付されていた。


「こ、これは…」


思わず、冷静さでは定評のある秘書としてではなく、素のリアクションが出てしまう程の可愛さ。
くるんとカールした長い睫毛に縁取られたまんまるの目が、びっくりしたようにこちらを見ている。
きっと不意討ちで撮られたのね。
ああ、マチに転送してあげたい。
きっと心底喜ぶのに。
可愛い子はどんな状況で写真を撮られても、とことん可愛くて全く嫌になるわ。

って、そんなことを考えてる場合じゃなかった。


「何なんですか?このメール」
小さく咳払いして平静を取り繕いながら尋ねると。

「…こんな…こんな姿のクラピカを不特定多数の奴等に晒すことになるなんて…」
「え?」
「こんなことならもっと強く反対するべきだった!!」

_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ