sweets,Inc.
□guimauve fraises
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「あ、これって最新号?見せて」
缶ビールを片手にソファで足を伸ばしていたマチが、ローテーブルの下に置きっぱなしにしてあった通販カタログに手を伸ばした。
ランジェリーやルームウェア専門のカタログで、まとめて注文すると送料のサービスがあるから、今まで何度かマチやシズクと一緒に頼んだことがあった。
でも今期はラブリー系が多くて私はパス。
多分マチの趣味にも合わないんじゃないかしら。
マチと一緒に訪ねて来たシズクは、ケーブルテレビで再放送されてる随分昔のドラマに夢中で、私達の会話には全く興味がないらしい。
差し入れに持って来た新フレーバーのポテトチップスを抱え込むようにして、テレビの前に陣取っている。
私は自分用のローズヒップティーを淹れて、マチの横に腰を下ろしながらカタログを覗き込んで
「…趣味変わった?」
マチが熱心に見入っているページには、レースやリボンがふんだんに使われた純白の下着が紙面一杯に掲載されていて。
ちょっと怯んでしまった。
だって今までの好みとあまりにも違うじゃない。
マチといえば、機能性重視でシンプル、でも急に彼の前で服を脱ぐことになっても大丈夫な程度にお洒落。
そんな下着を選ぶことが多かったと思うんだけど。
私もマチと比べたらフェミニンで可愛い方が好きよ。
でも、さすがにここまでフリフリラブリーな物はちょっと。
「馬鹿なこと言わないでよ。アタシじゃないわよ、アタシがこんなん着るわけないでしょ」
切れ上がった大きな目が大袈裟に私を睨む。
黙って大人しくしてれば結構可愛い顔立ちをしてるんだし、マチにも似合うんじゃないかしら。
こんなこと言っても喜ばれないのは分かってるから、私は黙ったままマチの言葉を待った。
「あの子の誕生日が近いって聞いたからさ。プレゼントでも、と思って」
あの子?
あの子ってどの子よ。
近々誕生日を迎える知人は一人しかいないはずなんだけど。
「あの子って…クラピカのこと?」
マチがカタログに視線を戻しながら、気のない素振りで頷いた。
何を贈ろう、どんなふうに祝おうと、連日沸いた頭で大騒ぎしてるクロロにマチまで洗脳されてしまったかと思ったけど。
クロロに対して崇拝にも近い感情を持った昔からの仲間内にあって、マチは結構冷静で、彼の意見に無条件で流されることはめったにない。
ってことは、単純にクラピカを気に入ったってわけね。
「下着をプレゼントするの?」
「んー。だってあの子、すっごい色気のないの着てそうなんだもん。クロロの様子見てたら、そろそろお洒落な下着の一つも必要かなーって」
そうね。
最近のクロロの浮かれようからして、その判断はあながち間違いじゃないかも。
「あの子が着るならこんなんでもおかしくないでしょ」
流れるような金色の髪。
繊細な金細工を施した大振りな宝石みたいな瞳。
確かにあの子がこんな下着をつけていたら、上等なアンティークドールみたいで可愛いかも知れない。
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