sweets,Inc.

□creamy day,more
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角度を変えて、何度も何度も。唇を重ねて、ついばむように。
その度に。
ただそれだけのことで、薄い肩が震えて跳ねる。

別れ際、挨拶代りにキスをすることさえ最近やっと許されたのだ。

それなのに。
こんな一足飛びに。
でも。もう君もいい加減知るべきなんだ。
動物としてどんなに不完全であったとしても。
自分がどれだけ魅惑的な存在か。
そして、俺がどんなに辛抱強かったかを。


発熱してるみたいに熱く濡れた唇の間に舌を差し込むと、捕食される瞬間の子兎みたいに君がもがいた。

キスに舌を使うことさえ知らないなんて。

固くくいしばった歯列を舌先でなぞると、未知の感触から逃れようと後退っては首を振る。
ソファの背もたれと大きな俺の体に挟まれて行き場を失った君が、喉の奥で苦し気に鳴いた。

「ク、…ロっ」
「苦しい?」
名残惜しく唇を離して、互いの鼻頭をすり合わせながら問いかけると。
束の間の解放に喘ぐ小さな口が、言葉も忘れてわななき、酸素を取り込もうと無防備に開かれた。
「怖がらないで。酷いことなんて絶対にしないよ」
その隙をついて人差し指を口内へ差し入れ、奥の方で縮こまっている舌を誘い出すように愛撫する。
「んっ…ん」
掻き出された唾液が指先をとろりと伝う。
「気持ちいいことだけ教えてあげるから、ね。俺の言う通りに出来る?」
「…ぅ、んっ」
肯定か否定か分からない。
どっちにしろ、もう後戻りするつもりはないから、俺はその返事の意味を確かめはしなかった。

人差し指を引き抜くと同時に再び唇を合わせて、逃げ惑う舌を絡め取り根元から吸い上げる。
とめどなく湧き上がる唾液が互いの口腔を満たして、口付けの角度を変える度にあふれ、クラピカの顎を伝っては落ちた。

濃密な舌と唇での戯れに、俺の胸を押したり叩いたり、無駄な抵抗を繰り返していた細い腕がゆるゆると俺の首に回されるようになって、やっと。
俺はほんの少し満たされた気持ちになって、子供みたいに軽いクラピカを抱え上げると寝室のドアを開けた。



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