sweets,Inc.

□creamy day:side Q
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本当はもっと豪華なプレゼントを贈って、ゆっくり二人きりで過ごしたかった。

ネットや雑誌で入念にリサーチして、この子に似合いそうな洋服やアクセサリーはいくつも見つけてあった。
それらを身につけさせて、つい先日完成して話題になったホテルで食事して最上階のスイートにケーキを用意して。

でも。
そんなことをしてもこの子は喜ばない。

喜ばないどころか、まず俺の選んだ服やアクセサリーを身につけさせるところで相当手こずるだろう。
俺達が出逢って一番最初の大切な日に、そんな無粋なことをしたくなかった。

俺好みの格好で、俺好みの場所に出掛けるのは、俺の誕生日にしてもらえばいい。
この子はこう見えて結構義理がたい。
その方がきっとスムーズに事が運ぶ。
それに着飾ったこの子を俺以外の奴に簡単に見せてしまうなんて。

そこで俺は、思い描いていた全てのプランを一旦白紙に戻した。

そして、うちの女連中が意外なほどにクラピカを気に入っていて、誕生日に何やらプレゼントを贈りたがっていたことを思い出した。
ついでに、なかなか俺とクラピカの仲を認めようとしない疑い深い奴等に、しっかりこの子を紹介してしまおう。
更には誕生パーティーの予定をぶつけて来そうな小生意気なガキと苦学生も、余計な手出しが出来ないようにこっちへ引っ張り込んでしまえばいい。

俺の打算による部分(俺の友人にはクラピカをみせびらかし、クラピカの友人には俺達二人がいかに愛し合ってるかを見せつけてやる)は大きいけれど、愛しい恋人が企画・セッティングした手作り感溢れるパーティーなんて、クラピカの弱いとこを突いちゃったりするんじゃないだろうか。

そう閃いてから誕生日当日までは本当に時間の経つのが早くて楽しくて。
仕事の合間を縫っての準備は結構大変だったけど(クラピカにばれないようにするのが一番大変だった)、そんな忙しさもまた幸せな充実感を与えてくれた。

俺がたった一人の誰かを喜ばせるために、こんなに懸命になる日が来るなんて、きっと誰も思いもしなかった。


月明かりの道を二人で歩きながら、この子が緊張に肩を強ばらせて声を掛けて来たときのことを想い返して、可愛かったな、大きな瞳がちょっと潤んでた。
今もまだそのクラピカと一緒にいられていることを、誰に感謝したらいいんだろうか、なんて、柄にもないことをとりとめもなく考えていた。


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