sweets,Inc.

□cherry tower:side M
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「ふーん。あんた達クロロ=ルシルフルって知ってる?」
「知ってる、知ってる」
「この辺であの人の事知らない奴いないだろ」
「俺等、あの人の知り合いの店で働いてんだよ」

それは好都合。

「じゃあ遊びに行く前に一つ忠告しておくけど、この子クロロの女だよ」
「えっ…」
バカな二人の顔色が一瞬で変わった。
「この子に手を出すって事は…それなりの覚悟があるんだよね?」
声のトーンを一つ落として聞いてやると
「いや、その…」
「あ、ああ、そういや俺達今日は用事があるんだった、な」
「ああ、そうだ、そうだった。俺達行かなくちゃ、じゃあまたね」
みっともないくらいにあたふたと店を出ていく二人にヒラヒラと手を振って、アタシは大きく溜め息をついた。

何とか最悪の事態は避けられたと思うんだけど。
一気に疲れた。


「あの…ありがとうございました」
すっかり存在を忘れていた少女に、ふいに声をかけられてアタシはちょっと狼狽えた。
その声があんまり透き通っていたから。

「ああ、別に」
アンタのためにした訳じゃないし。
「しつこくて困っていたのでとても助かった」
それはどうも。
ただ、アンタもクロロの女なら、これくらいの事は自分で対処しなさいよ、そんな悪態の一つもついてやろうかと思ったとき
「貴女はクロロの知り合いなのだろうか?」
「ああ…まあ、仕事仲間みたいなもんかな」
少女は、そうか、と呟くと神妙な、それでいてやけに可憐な表情でアタシを見つめた。
あ、それが噂の“俺様を金縛りにする瞳その一”かな。
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