sweets,Inc.

□cherry tower:side P
4ページ/5ページ

意味が分からずただぽかんと立ち尽くした私に、クロロは不貞腐れた様に、悪いか、とだけ言い、そのままスタスタと歩き出してしまった。

慌ててその背中を追いながら、けれど追及を止めることが出来なくて。
「それって…本当に付き合ってるんですか?恋人と思ってるのは社長だけで、彼女の方はなんとも…」
早足で歩いていたクロロが突然立ち止まる。
危うくその背中にぶつかる、寸の所で何とか踏み留まり何事かとクロロを見上げると、絶望感に淀んだ瞳が私を振り返って
「そうなのかな…そうなのかも知れない」

あ、マズイ。私、言っちゃいけないこと言ったみたい。

「あ、いえ、そうじゃなくて…えー、随分とガードの固い彼女なんですね」
ああ、言葉を選ぶって難しいわ。

「ガードが固い…か」
「手を出す隙がないとか?」
「いや、むしろ隙だらけなんだ」
「…?だったら社長のペースでキスでも何でもしたらいいじゃないですか」
今まで数えきれない程の女を、笑顔一つで腰砕けにしてきたんだから。
「そうなんだ。そうなんだが…あまりにも隙がありすぎて逆に手が出せないっていうか、彼女の傍にいると、そんなやましい気持ちを持っている自分が物凄くイケナイ男みたいな気がして…」
実際イケナイ男じゃないのと突っ込みたいのは山々だけれど、素知らぬふうで適当に相槌を打った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ