一輪挿
□ポーラスター
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珀明は今こそ稀有な審眼美を持ってはいるが、それは碧家において無能ゆえ、彼が努力を重ねて修得したものだった。
しかし、それでも尚、類い稀なる芸事への才能を持って生まれた姉と比べられることは多く、彼を常に苛んだ。
その中でも彼を打ちのめしたのは−。
『弟君が姉君の才能を持って生まれていたらなんの問題もなかったのに』
姉・歌梨が男名で描くのを拒んだゆえ、一族に幽閉された事件は、珀明にも消えない傷を残した。
自分に才がないゆえ、一族の利とならず姉は傷ついた。
そんな卑屈になっていたその頃−。
ちょうど貴陽からある報せが飛び込んだのだ。
貴族でも彩七家でもない、しかも齢十六の少年が国試に状元及第した、と。
恵まれていないことをものともせずに自らの力で高みへと登った彼・李絳攸の姿は、珀明に鮮烈な光をもたらした。
突如朝廷に昇った綺羅星。その日から、彼は珀明の憧れであり目標となったのである。
元々賢い子供だったため、さらに努力の甲斐あって瞬く間に神童と呼ばれるようになり、現在に至った。
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