十人十色
□素直じゃない子の治療法
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「!!!」
ばれてた!
必死の思いで痛みを堪えていたのに、あろうことか関わりが一番薄いこいつに見抜かれていたとは!
絳攸は羞恥から顔を真っ赤に染める。そしてそんななけなしの矜持は素直に事実を認めようとしなかった。
「…け、怪我なんて、俺はしていない!!」
「はぁ?いや、でも今だって足首のせいで転びかけてたじゃん」
「き、気のせいだ!俺は平気だから−…」
支えてくれていた燕青の手を無理矢理ほどき後退する、が、強がりで辛抱出来るほど足首の痛みは軽いものではなかった。
「だっ…!」
再び激痛が走り、絳攸の顔が歪む。
そんな強がる絳攸を見て、燕青は呆れたような面持ちで大きな溜息をつく。そしておもむろにその逞しい腕で絳攸の足をひょいっと掬いとると、横抱きに抱えあげた。
「な、なっ…!?」
予想外の燕青の行動に、絳攸は呆然となる。その隙に燕青はそのまま絳攸をすたすたと室の中央にある寝台まで運ぶと、足首の負担にならないように投げ出した。
「わっ、ぷ!」
「かっるいなー李侍郎さん。ちゃんと食ってる?」
「な、何のつもりだ!」
やっとの思いで怒鳴りつけるも、燕青はそしらぬ顔で絳攸の右足首を掴むと、慣れた仕草で下衣を捲くり、沓を脱がせ始めた。
「か、勝手なことをするな!」
「素直じゃねーなー。これ以上騒ぐようならもっと力づくでやってもいいんだぜ?」
「…っ」
半ば脅しのようなことを言われ、両者の間に沈黙と緊張が走った。
暫くして先に根負けしたのは絳攸の方だった。
「…好きにしろ!」
諦めたように吐き捨てると、足首を燕青に預けたまま寝台に仰向けに倒れ込む。
「うーわー、治療する人に向かってその態度?」
燕青は絳攸の横柄な態度に厭味を漏らしつつも、表情には笑顔を戻し、するすると絳攸の足首の治療を始めた。
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