図書室

□逢いたい気持ち
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寝苦しい季節から一変して過ごしやすくなり、窓を開けると涼風が入る。それはとても心地良いものであるが、彼は感傷的になってしまう。

「はぁ……逢いてぇなぁ…」

ぽつりと吐いた言葉の声の主、黒崎一護は夜空に浮かぶ満月を見ながら逢いたい人の事を思う。

「誰に逢いたいんだ?」
「え…?」

あまりにも一瞬の出来事だったので何が起きたか理解できなかった。さっきまで見ていた月は見えなくなり、目の前には人がいる。黒い死覇装に白い羽織、逆光でも綺麗で目立つ銀髪、そして翡翠の瞳。それは黒崎の想い人だ。

「冬獅郎…」

そこにいたのは日番谷冬獅郎。尸魂界という魂魄が住む世界にある瀞霊廷の護廷十三隊、十番隊隊長を務める死神だ。そして黒崎の恋人でもある。

日番谷は窓から入ると黒崎の首に腕を回し抱きついた。幻でも見ているのかと考えていると、ふわっとした日番谷の匂いが現実だと言ってると感じた黒崎はそれに応えるように抱き返した。

「一護、逢いに来た…」

小さく呟いた声はしっかりと黒崎の耳に届いていて抱き締めていた力を強めた。

「俺もすげー逢いたかった…一ヶ月以上も逢ってなかったからな」

顔を見合わせて自然と近付く唇。初めは軽く触れただけ、次は長く深い口付け。離れると日番谷の頬は赤く染まっていた。これが初めてという訳ではないが、いつまでたっても慣れないようである。

「顔真っ赤。慣れろよ」
「…うるせぇ…こんなの慣れるかよ…」
「まぁ可愛いからいいけど」
「な…可愛いとかいうな…!」

可愛いの言葉にさらに赤く染める。しかし手はしっかりと黒崎の服を掴み、顔を俯ける。その姿はとても愛らしくて黒崎は日番谷の頬に手を添えて顔を上げる。

「お前の言動全てが可愛いんだよ」
「…ばか…」
「無意識でそんな可愛い事ばっかやってるなんてやっぱ冬獅郎は天才だな」
「意味わかんねー…それに『天才』って厭味か?」
「厭味じゃねーよ。ただ…」
「ただ、何だよ?」

黒崎は日番谷の目をしっかり見て優しい笑顔をしながら続けて言う。

「嬉しいんだよ。こんな可愛い冬獅郎を知ってるのは俺だけなんだって思ったら。独占してる感じがすげー嬉しいんだ」
「…ばかやろ…俺も…うれしい…」
「え…」
「こんなに…一護に愛されてるんだって…そう思うだけで…幸せだから」

真っ赤になってそんな事言われたものだから黒崎は嬉しくなって勢いよく日番谷に抱きついた。

「冬獅郎ーっ!!」
「ぅわっ!?」
「今日は何時にも増して可愛いじゃねーか?!」
「ぅ、うるさい!っていうか静かにしろ!」

急にテンションが上がって夜中にも関わらず大声を出してしまった黒崎。それに対して注意をする日番谷。そんな二人のやり取りは恋人というより、『弟に怒られる兄』に見える。しかしここは現世の黒崎の部屋、二人に野次を飛ばす者はいないから幸せオーラを出しまくっている。


  
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