Novel
□大量の服
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「な……なに言ってるんですかあぁぁ!こんな大量の服、いりませんよ!」
思わず、立って抗議をすれば、副長は不機嫌そうに、潜入捜査で着ればいいじゃねぇかと、煙草をふかしだしてしまった。
たしかに潜入捜査や囮調査の時は、女の方が効率がいいので、それなりの格好はするが……女性ものの服は自腹叩いて買った持っている分で、事足りている……。
ましてや、自分のタンスは変装ようの服で、もう入る隙間がない……。
「全部、オークションにかけたらどうですか?」
「オークションか……」
今、ポケ●ンカード一枚に5000円の価値が付く時代……この服達もそれなりに売れるはずだ……それに、ナースやらマニア的な物ほど高くなるし……
「やっぱ、おまえの部屋持ってく。」
そうすれば、服も片付いて、お金も………はい?
「…今、なんていいました…?」
煙草を口にくわえながら、乱雑に服を畳んでいた副長は、一回言っただろうという目を見せ……
「おまえの部屋に持ってくんだよ…。」
…っと言った。
さぁー…っとアオスジが立ったのは言うまでもない………副長室より狭い、自分の部屋に入るわけもない、大量の服をどうしろというのだろう………。
「おまえの好きにすればいいだろう。」
困っていた俺を見つけ、手伝えと催促した。
俺は仕方なしに、目の前の着ぐるみから、畳んでいった。
副長は好きにしろと言ったんだ……自分の部屋に行ったら、写真撮って、オークションに出してしまおう……。
そういえば…
「どうして俺なんですか?」
これらの女性服なら、近所のお妙さんや、キャサリンにあげれば喜んでもらってくれるはずだ。
たしかに、副長自身が行けるわけもないが、俺や下っ端にでも、やらせればいい。
他にも、沖田さんが飛び付くような品だって………
「総悟に渡したら、悪戯に使われるだろうが……」
「あぁ〜…」
たしかに……屯所の隊員が女性服に身を包んでいる姿が容易に浮かぶ……きっと沖田さんはそれを陰で笑っているのだろう……。
「それに…」
沖田さんの黒笑を想像していた俺を見つめながら、副長は改まったように言った。
そのくせ、手はせっせと、乱雑な服の山を作り出している。
俺の部屋に入れるなら、もう少し綺麗に畳んでもらいたい……。
「オマエに着てもらいたかったんだよ……。」
「はい…?」
たぶん、副長の精一杯の照れ隠しなのだろう。
何枚かの服を俺に投げ、早く畳め!と、そっぽ向いてしまった。
俺の手の中には、趣味がいいとは言えない、ピンクやらヒラヒラやら…世間でいうロリータ服が数枚…。
オークションに出せばそれなりの額になりそうだが………
しばらくは、俺の部屋にあるだろう………
END