この世界で
その隠された素顔を
オレしか知らなければ
いいのに、
とか考えてしまう――
「――そういうオレは鬱陶しいってば?」
いきなり真顔でそう言われ、カカシは目を見張った。
この青年は天然で、そういう事を照れもせずに言い放つ。
直接的な言葉には可哀想なぐらい、頬を真っ赤に染めるのに…。
そんなことを考えながら、ナルトの言葉に苦笑を返した。
「鬱陶しいわけないデショ。むしろちょっと嬉しいかも…」
ナルトの鼻の頭をツンとつつけば、ナルトは小首を傾げた。
「嬉しいってば?」
「妬いてくれてるんでしょ?オマエはあんまり表に出さないからね、オレは嬉しいの」
そう言い、カカシはナルトを正面から抱きしめた。ナルトもおずおずと背中に手を回す。
しばらく互いの体温を分け合っていたが、カカシからおもむろに体を少し離し、顔を見合う。
「んで、顔の話だな。
まー…飯食ったりする時はこれ外すし」
と、カカシは人差し指で顔を覆う布を引っ張ってみせる。
「オマエより一回り以上も年が上な分、そういった経験もあるわけで」
困ったように苦笑いをするカカシ。
ナルトは少し不満げだ。
「オレの顔を知ってるやつは、確かにいるが…」
一旦そこで一息つき、適当な言葉を探る。
「…みっともない嫉妬からきた怒りの表情や」
そういえばと、ナルトは嫉妬深すぎるカカシの怒り狂った時の表情を思い出す。
「オマエのぬくもりに触れた時の安心した表情」
確かにオレに触っている時の先生は嬉しそうで、安心してるようにも見えなくもない、と頷くナルト。
「今みたいに、こんな穏やかな表情はオマエしか知らないよ」
カカシ自身は見ることは叶わない表情だが、今までとは明らかに違っているだろうと、自分自身でも予測できる。それ程にナルトの横は居心地がいいのだ。
改めてナルトに視線を合わせれば、頬が薄いピンクに染まっていた。
カカシはにっこり笑って、淡いサクラ色のそれにキスをした。
「過去のことは変えられないから仕方ないけど、オマエの横に居るときの表情はオマエだけのものだよ」
――それじゃ満足できない?
優しく耳元で囁けば、ナルトの体がビクリとはねた。
「…ッ…その声、」
「声?」
「そのエロい声も!!オレ以外に聞かせたらダメだってばよ!!」
カカシは笑って了解と短く答えた。
そしてもう一度、ギュッと抱きしめ合った。
自分が
こんなに
嫉妬深いと
思わなかった。
それは
貴方が
相手だからだと
思わずにはいられなかった――。
20090826