今朝は本当に寒くって、ベッドから這い出るのにいつもより多くの時間がかかった。ようやく起き上がってカーテンを引くと、キラキラ輝く白が眩しくて、思わず目を細めた。
「…雪……」
ようやく春がきたと思ったのに…。冬の最後の悪あがきというか、春への準備というか…。
ま、これぐらいの雪なら昼頃に溶けるだろう。それがせめてもの救いだった。
「はぁ…。寒…。」
雪が降ったのだから当たり前だが、部屋の中は酷く寒い。それ以上に一人だけの空間はどこか寒くて、寂しく感じた。
例え雪が降ろうとも忍には関係なく、休む暇などはない。仕方なくオレは上忍待機所へと向かう。
「はぁー寒い…。」
寒さに怯えるオレを尻目に、キャーキャーと喜ぶ子どもたちの声が辺りに響いている。道の端には既に雪だるまが作られていて、子どもたちのはしゃぎ様が伺えた。
「元気だねー」
なんてジジくさい発言に苦笑しつつも、あんな風にはしゃげる子どもが少し羨ましい。
「雪で遊んだことあったっけ…?…そりゃあるか」
訳の分からないノリつっこみをした自分の行動に若干の後悔をした。それを感じながらも、とりあえず足を動かしていった。
□■□
待機所に着いた早々に呼び出され、今日の任務を言い渡される。適度に困難な任務が3つ。…3つって何だよ。明らか多いだろーよ…。
「たまに7班の任務が休みだと思ったら、こっちが面倒くさいなんて…。はぁ〜。も…病みそー」
がっくりと肩を落としても、しなければならないのだから仕方ない。
気合いを入れ直し、任務地へと向かうことにした。
■□■
何とか任務を終わらし報告に行けば、もう夜であと数時間で日付が変わるといったところだ。
これでも早く片付けたのに…。
「あーあ、ナルトは休みだからちょっとでも一緒にいたかったのにー。恨むよ…火影様」
なんてぼやきながら、トボトボと家へ向かって歩き続ける。
はぁ〜とため息を零せば、白い息が吐き出され寒さが強調された。
やっぱり寒さのせいでいつもより寂しく感じるなぁ。夜だし…。
あと少しの家までの距離を早歩きで詰め、家の前で立ち止まる。鞄からカギを取りだしカギ穴に入れて回す。
――が、
「あれ?」
手応えがない。
ドアノブを回せば、案の定ドアは簡単に開いた。
そのままゆっくりとドアを開き、警戒しながら、プラス僅かな期待を持って入った。
リビングに足を踏み入れると暖かい空気が身体を包み、飯の香りが鼻をくすぐる。
そして―‥‥
「あっ!!先生っおかえりなさいってば!!」
オレに気づいたナルトは嬉しそうな笑顔で駆け寄って来た。蛍光灯に照らされ、キラキラ輝く綺麗な金髪が目に入る。
瞬間
心がホッとして、
高鳴る。
何て矛盾な心境。
でも――‥
「前に借りたカギで勝手に入っぅわっっ!!」
近づくナルトを抱き上げ、壊さないように大切に、けれど気づけばぎゅっと抱きしめていた。
「っんせ、」
溢れる。
「苦しーってばよー」
“愛しい”が
「ごめん。ちょっとガマンして?」
止まらない。
「せんせー謝る気ねーな?ま、いーけど」
オレの腕の中で、クスクスと笑うナルト。きっと困った顔なんだろうな。
「今日さ雪降ったからシカマルとかと遊んでた」
「そっか。久々に雪降ったもんね。楽しかった?」
「うん。
先生の身体冷たいってば…。外寒かった?」
「凄い寒かった。からあっためて?」
「ん、いーよ」
一層強く抱き返してくれるナルトの体温が心地いい。
重なる心音に安心感を覚えた。
そうしてゆっくりと顔を上げて、見つめ合う。
クスリと笑みを零せば、ナルトはにししっと笑った。
「ただいま、ナルト」
「おかえりなさい、カカシ先生」
キミがいるだけで
ああ
何て暖かい――‥。