過去拍手文

□trick only!
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[Halloween記念]



「とりっく おあ とりーと!」

 いきなりナルトが放った一言に、そういえば今日はハロウィンだと気づかされた。その行事自体は木の葉ではあまり浸透していないが、最近の子どもたちはこれ幸いと大人たちにお菓子を頂いているようだ。
 ナルトも誰かから聞いたのだろう。オレに問いかけてきた。オマケにその姿は可愛らしく、頭にピンと尖った耳、尻にはふさふさの尻尾をつけ、頬にもヒゲを生やした、半狐に変化している。
 ――ってこっちがメインだっけ?まぁいいか。

 とりあえず、何かお菓子はないかとポケットを探ると、この間、アンコから貰った飴が入っていた。それを取り出そうとした時、がしっと音がするぐらい、ナルトに腕を掴まれた。


「どしたの?飴ほしくない?」


 そう聞くがナルトは返事をしない。不思議に思っていると、ナルトがもう一度言った。


「と…とりっく! おあ とりーと」


 やたらtrickを強調したように言うから、つまりはイタズラさせろということか?

 …ナルトのイタズラね〜……。この子やんちゃだからなぁ。


 ……う〜ん…。

 まぁ、いっか。昔みたいな事はもうしないだろうし。

 クスっと笑みをこぼしてからナルトと目を合わせた。


「ナルト、先生お菓子持ってないんだ。ごめ〜んね?」


 予想通りイタズラしたかったらしく、ナルトは満面の笑顔になった。

 何か怖いな…。


「へへっ!!イタズラ決定!!」

「ん〜何されるの?」

「先生屈んで?」


 言われた通りナルトの目線に合わせてしゃがんだ。

 その後もナルトの指示通りに動く。


「目瞑って」

「そのままだからな」


 ナルトは恐る恐るオレに手を伸ばし、まず額宛てを外した。そしてオレの前髪をかきあげる。


「わ…先生の傷痛そ…」


 独り言のように呟くナルトにもう痛くないよと返した。


「睫長いってばね」


 やっぱり呟きながら、今度は顔の下半分を覆う布に手をかけた。ゆっくりと布を下ろすナルトは、きっとオレの動きをみているのだろう。だがオレが何も抵抗しないからそのまま布を下ろした。


「…っぅゎっ」


 ナルトは小さくそう言った。

 失礼な…。結構傷つくな〜。

 だがすぐにその思いはナルトの一言に打ち消された。


「かっこい…。」


 …///

 …ヤバ///

 嬉しいじゃないの、ナルト。

 とりあえず、照れ隠しにどうもって返事をしといた。


「先生…」

「なぁに?」

「何しても怒んねー?」

「何してもって…酷い事したら怒る。けど今はイタズラされ中だしね〜。今だけなら許してあげるかも」

「おぅ。じゃ許してってばね。先生…まだ目瞑っててってば」

「ハイハイ。分かってるよ」


 ったく…何されるのやら……。

 ナルトの手がまた伸びてきてオレの頬に触れる。直後に左頬に柔らかく暖かい感触。
 思わず目を開けてしまった。


「ナル…っ」

「――っ」


 目の前には真っ赤な顔をしたナルト。


「目開けるなって言ったのに…」

「え?あっ…」


 それより今の…


「イタズラ完了!!じゃーな先生」


 そう言った後ナルトは駆けていった。

 え…今のって…?
 ほっぺちゅーされた?

 え///

 あ…あの姿のままウロウロしないで欲しいな…。
 きっとあの子、他の人にもあんな事するんじゃ?
 いや絶対するよな。
 オレにしたのと同じイタズラを?
 そ…んなの許すわけないでしょー。

 そう結論づけナルトを追いかけようとした時、走っていたナルトが振り向いて叫んだ。


「先生!! 今の!! 冗談じゃねーから!!
 オレ先生が…」


 遠く離れたナルトが言った言葉は聞こえなかった。でも、上忍をなめんなよ。
 ナルトの唇は確かにかたどった。


 ――スキ


 と。


 オレはずれていた額宛てと口布をあげ、ゆったりと、だが内心急いで、ナルトを追い掛けた。


 オレも好きだと伝えに――…。




 ああ…もぉ

 こんなに照れたのは久々だ。

 やっぱりちょっとゆっくり歩いて冷ましてから会お。








20081019



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