過去拍手文

□My World
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「あらら…雨か。」


 空一面に広がる分厚く、うっそうとした雨雲。光が差し込む隙間もない。


 はぁ〜。

 ついてない。


「仕方ない、濡れて帰るか。」

 そう一歩踏み出そうとした。

 ――しかし、その足は留まった。

 そして、振り返る。

 そこには


「カカシ先生っ!!」


 金の愛し子。


 大きな傘をさしてこちらに向かってやって来た。


「迎えに来たってばよ。」


 にししっと子どもは大きな笑みをつくる。


 ――あ。

 その顔…。


 まるで、



 瞳は快晴の空。

 輝く金糸は太陽。



 まるで君が世界だよ。


 そう思う。


 ――いや…



 オレの世界が君なんだ。





 オレの世界を照らすのは君なんだよ―‥‥。








「ありがと。
 でもなぁんで傘が一つなのよ。」


 おっちょこちょいだね、と額をつんとつつく。


 すると、子どもはボンっと音が聞こえそうなほど、頬を朱に染めた。

 その顔を隠したいのか慌てて下を向く。


 子どもの唇が尖っているのが見えた。少し拗ねたみたいだ。


 それが可愛くて仕方ない。

 クスっと聞こえないように笑う。



「…ぅってば。」


「え?」


 聞こえなかっということは、音に出せていなかったのだろう。

 思わず聞き返した。


 すると子どもはばっと顔をあげて、オレを正面から見つめてきた。


 ‥‥どク‥っ。


 紅潮した頬。

 潤んだ瞳。

 紅い唇。



 なんて

 扇状的。




「違うってば。」


 子どもの声ではっと我に返った。
 慌てて返答する。


「何が?」


「…一緒に帰るから…。」


 だから2ついるんでしょ?


「だから、
 ‥――もぉ///
 先生、傘持ってってば////」


 子どもは傘を差し出した。


「うん、でも…ナルトは、‥‥ぁ‥。」


 もしかして、


「一緒に帰る?」


 持った傘を子どもの方に傾けた。


「うん!」


 子どもは満面の笑みで答え、傘の中へと入ってきて。

 オレにぴったりとくっついてきた。

 頬はまだ赤いまま。

 二人で並んで歩き出す。

 子どもははにかんだように笑い今日あったことを喋る。


 君が望んでいたのはそういうことか。




  ドクん。





 ああ…


 本当に君は――‥‥


 何度オレを



 照らしてくれるのか。



 君がオレの世界。


 君が笑えば快晴で。




 だから、もう少しだけ雨よ振れ―‥。






 二人で一つの傘で。


 いつもより近い距離で。





















 柄にもなくドキドキしたのは秘密――‥‥。










20080729



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