ナルトがようやく任務の報告を終えた頃、既に外は真っ暗になっていた。
今日は何を食うかな等と考えながら帰り支度をしていた時、慌てたように自分の名が呼ばれた。
「ああああのっナルトさんっ!!」
「な何だってばよ?」
相手の吃り具合にナルトも思わず言葉に詰まってしまった。
よくよく観察すれば、話しかけてきたのは後輩のくのいち達。どこか気迫漂う彼女たちの雰囲気にナルトは無意識に一歩後退りしていた。
「ほら、弥生」
「頑張って!」
弥生と呼ばれた真ん中の子が両脇の二人に背中を押されて、一歩前に出る。そして、風をきる音が聞こえそうな勢いで、頭を下げた。
(え、えーっと…?)
「なナルトさん、好きなんです…。っつつっつ付き合ってください」
勢いとは裏腹にか細い声でそう告げた。頬といわず、耳といわず、項までも真っ赤に染め上がり、指先は小刻みに震えているのが分かる。
側にいる二人が、間髪入れずに、言葉足らずな弥生にフォローを入れる。
「うずまき上忍お願いしますっ!この子、前にうずまき上忍に励ましてもらってから、ずっとうずまき上忍のこと好きなんです」
「いや、あのっ…」
「返事は今すぐじゃなくていいんです。考えてくださいっ!お願いします!」
「あ、えっと…」
ナルトは頭をかきながら、どうしたもんかと困惑していた。
最近になって、告白されることが増えた。幼い頃なら手放しで喜んでいただろうが、今は心に決めた相手がいるのだから返事は勿論NOしかない。だが、どのように断ったらいいのか分からなかった。
一度すっぱり断ったら、相手に酷く泣かれ、周囲から白い目で見られたことがあった。
それに、今のように何人かで来られたら威圧感にやられてしまい、言いたいことが出てこない。しかも、本人からではなく周りのくのいちから何だかんだ言われたりもする。
過去の失態を思い返し、ナルトは言葉に詰まった。
「えー…っと、オレそんないいやつじゃねーってばよ?」
「ナルトさんは優しいです!!前、私が任務で失敗した時、優しく励ましてくれました」
「そんなことあったってば?」
「あったんですっ」
(覚えてねーし…。てか多分、オレがよく失敗してたから、気持ちが分かったからだけなんだろーけど…)
そう思うが、流石にそんなことは言えず、また言葉に詰まる。
「あー…えっと…」
「返事は今じゃなくていいんです。私のことそんなに知らないと思うので、また会いにきます。それから返事くださいっ!
それじゃ失礼しますっ」
女は一息でそう言うと、また深く頭を下げた後、側にいた2人を引っ張ってその場を走り去った。
「そんなこと…言われたって…」
残されたナルトは、長い長い溜息をつき、頭を抱え込んだ。
「どーやって断ればいいんだってばよ…」