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□日曜日
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 ――朝。

 木の葉の隠れ里で、昨夜から降っていた雨はあがり、よく晴れた日曜日。
 チュンチュンと鳥たちがさえずる声が聞こえてくる。


 うずまきナルトは腕を頭上に伸ばし、大きな声で欠伸した。


「んー!!
 いーい天気だってばねー」



 いつもより少し遅い時間に起き上がり、カーテンを開けてから、裸足でペタペタと洗面所へ向かう。
 顔を洗って、溜まっている洗濯物を洗濯機に放り込んで、スイッチを押した。

 朝ご飯は食パンに目玉焼きに牛乳。
 準備をして、食べて、片付けて――。
 そうしているうちに洗濯機が止まったようだ。

 洗濯物を干したら、ひとまず休憩。


 次は何をしよってば?



 とりあえず床にごろりと寝転んで、テレビをつけるが、興味もわかない内容ばかり。結局電源を切った。


「ひま。つーか、やる気出ねーってば」



 寝返りを打って窓の外を見やる。
 空は気持ちいいくらいの快晴。
 外からは子どもが遊ぶ声が聞こえる。
 静かな部屋に一人でいることが、どこか虚しくて、寂しくて――。


「泣きそ…」




 無性に目頭が熱くなる。
 誰かが見ているわけじゃいのに、泣きそうなのを隠したくて、腕を上げて視界を遮った。


「あー…も、ダメってばよー」



 何も悲しいことはないのに、目の端から涙がこぼれた。


「あー、昼飯作んなきゃ…」



 誤魔化すように呟いたが、涙は止まらない。



 その時窓からノック音が聞こえてきた。


 ――コンコン


 カカシ先生かな?



 そう思うものの、泣いている今の顔を見てほしくない。


 寝たフリしよ。



 ナルトはその格好のまま、ノック音を無視し、寝たフリを決め込んだ。


 あ…オレってば窓の鍵開けっ放しだったかも…。



 ナルトの予想通りで、ノック音を響かせたはたけカカシは、遠慮もなく窓を開け、部屋に上がり込んだ。


「ナぁルト?」



 反応しないナルトのそばまで、恐る恐る近寄る。


「野菜持って来たよー」



 いらねーから早く帰れってばよ…。



「寝てるの?」



 カカシは野菜をひとまず机に置いた。
 そしてナルトのそばに座り、頭を撫でていく。


 ナルトは腕で隠しているので、顔は見えない。それをカカシはどこか残念に思っていた。


 顔みたいなー…。



 少しはねた、ひよこみたいな髪の毛に指を通すが、さらりとこぼれてしまう。

 出来るだけ優しく、起こさないように撫でていく。


 ――優しく優しく。


「こんな所で寝ちゃって。きっといっぱい疲れてるよね…。
 休みの日ぐらいゆっくりしたいのに、ちゃんと洗濯までして…。
 オマエは偉いね」



 優しく撫でるその手、ナルトを映すその瞳、語りかけるその声は慈愛に満ちていた。


 先生、何を言ってるんだってば?
 洗濯くらいなんでもねーのに。 別に何でもねーことなんだってばよ?

 なのに何で…


「…ッ…」



 さらに涙が溢れてくる――‥‥。


 起きてるのがバレるってば。



 必死で堪えるものの、最早隠すことができない程に嗚咽が漏れている。


 カカシはすぐにナルトの様子に気づいたが、何も言わず、ナルトを抱き上げてベッドへと運んだ。

 人が近くにいることにビクリとしたが、逆にその体温にどこか安心感を覚えた。堪らず、ナルトは目を隠す手とは逆の手で、ぎゅっとカカシの服を握った。


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