「オレってば、実は暗部なんだってばよ!!」
少年はいつもの笑顔でそう言った。
Lie or Truth...??
爽やかな、けれど花粉を多分に含んだ春風がそよぐ。桜は蕾を膨らませ、ちらほらと花が咲いている。
そんな気持ちのいい午後。このお騒がせ少年は、嘘だと分かる嘘を大きな声でついた。
「何言ってんのよ、ナルト…」
そう肩を落とし、対応するのは桃色の髪がこの季節によく映えるサクラ。最早突っこむことも億劫らしい。
漆黒の少年サスケは取りあいもしない。ただ黙々と昼飯を口に運んでいる。
そしてオレ、はたけカカシ。
とりあえず少年の言動にハイハイと返し、ただ愛想笑いを浮かべていた。
内心ではナルトが暗部だったらと考えるものの、想像さえもし難いもので、それはないだろなどと思っていた。
「本当なのにー」
「あのね、暗部はそんなホイホイ言うわけないでしょ!!」
「あ、そうだってばね」
と、少年は今気づいたと分かる反応を見せる。
――オイオイ…。
「だいたい今日はエイプリルフールってこと、知ってるんだから。そんな簡単に引っかかるわけないでしょー」
サクラが最もなことを口にすれば、ナルトはちぇーっと小さく呟き、サスケに習い飯を食い始めた。
■□■
任務の報告を終え、家に帰ろうと部屋を出た時、入れ違いで部屋に入る人物がいた。
「春日!!」
「…どぉも」
暗部装束を身に纏う彼の名は春日。もっとも暗部としての名前だが…。ちなみにオレの想い人。
出会いはオレが任務で手こずっていた所を、たまたま通りかかった春日が手伝ってくれたこと。その後何回か会うごとに惹かれてしまい、気づいた時には惚れ込んでいた。会った回数こそは少ないが、これはこの想いは本物だ。
名を呼ぶと彼は目に見えてイヤそうな顔をした。しかしそんなことには頓着せず、腕を広げて春日を抱き寄せた。
「会いたかったよっ!!」
「急に抱きつかないでください」
そう言いつつも彼は逃げない。何だかんだ言いつつも本心では嫌ではないとふんでいる。
「だって会いたかったから」
「だからってうっとうしいって」
「報告?今日それで終わり?だったら、一緒に帰ろ!!」
「…話を聞けよ……」
「待ってるから早く出してきてよ」
「……はぁ……」
一つため息を落とした後、春日は扉の向こうへ消えた。
しばらく壁にもたれて待っていると、報告を終えたらしい春日がまた戻ってきた。二人ならんで、出口へと向かう。
「ねー本当の名前何ていうの?」
「オマエなぁ…。暗部がそれを言ってしまったらダメだろ」
「だってさー…本当の春日を知らなかったら、口説きようがないじゃない。家にだって送りにいけないしー」
そう…。オレはまだ春日の本当の姿を知らない。だから一緒に帰ると言っても適当な所で別れなければならないのだ。
春日は考えるように少し首を傾げた後、口角をあげておどけるように――
「自分でオレを見つけろよ。オレはオマエの知り合いだぜ」
と言った。
――……はぁ??
「はぁ!!??そんなの初耳っ!!!!」
本当に驚愕したオレは今の時間帯も忘れて大声を出してしまっていた。
「うるせー。っていうか初めて言ったし」
「ウソっ!?」
「嘘言ってどうする…」
「あ!!だって今日はエイプリルフール」
「1日はとっくに終わった」
確かに1日が終わって既に2時間以上は経過しているが、にわかには信じがたい。
「じゃーついでにもうちょっとヒント頂戴?」
お願いと手を合わせて懇願すれば、春日はヒント?と復唱して、考え始めた。
「そうだな…。オレはオマエに『オレは暗部だ』と言ったことがあるが、オマエは信じなかったな」
「え?そんなこと言ったの?」
「まぁな。
ヒントは此処までだ。後は頭捻って、しっかり考えな。そんでオレを見つけたら考えてやらなくもない。オマエとのこと――。
じゃあな」
「えっ!!ちょっ…」
何かを言う隙も与えず、春日は姿を消した。
けれど彼は希望の言葉を残していった。
「絶対見つけ出してやる」
そう心に近い、オレは家路を急いだ。
彼と重なる人物をゆっくり考えるため。
―――ああ、今日は眠れなさそうだ。
20090402