「カカシが任務地から帰って来ない」
静かな部屋に綱手の声が響いた。
あの日からもう1年になる。
-輪廻転生-
思い入れのある場所はいくつもある。
その中の一つ慰霊碑のある場所。
いつの間にかここに小さく刻まれたあの人の名。
信じることはできなかった。
「だって…まだこんなにも想ってる…」
胸に突き刺すような痛みは失せることはなく、より一層オレを蝕む。
「…オレ…火影になるって言ったけど…」
瞼が一気に熱くなり、目の前がぼやける。
「も…頑張れねーってばよ…」
ふわりと頬を撫でるように風が吹き抜けた。まるでオレを励ますかのように…。
「…っ…無理だってば。先生の居ない世界で、オレだけ生きてる意味が分かんねーってばっ!!!!」
――ナルト…。
「先生っ!!何で!?」
――ナルトのご両親は亡くなっているけどね、
「な…んで…?」
――きっともう生まれ変わって同じ世界に居るんだよ。
「何で…死んでしまったんだってば?」
――それって凄くないか?もしかしたらまた会えるかもしれない。
会ったことない両親なんかより、ずっとずっと先生に会いたいよ…。
「次オマエの隊に入る新人、超天才なんだって?」
トンと肩に手を置き話しかけてきたのはシカマル。
「ああ〜14歳らしいよ。すげーってばよね〜」
「ね〜って…。人事じゃねーだろ?ま、バカにされねーよう頑張れや」
一言余計な言葉にカチンときたが、オレが口を開く前にシカマルは退散した。
ふうと一息つき、壁にある時計に目をやると集合時間までに時間がある。少し思案したあとオレはあの場所へと向かった。
赴いた先は先生の名が刻まれた慰霊碑。
それを前にしてぽつりと呟く。
「…先生…。まだオレが生きてる意味あんの?早く死にたいってばよ」
いつも自問していること。
いつも答えは出ない…。
ふと人の気配を感じ、一拍おいて声変わりが終わり切っていない男の声が響いた。
「早死にしたいと思う奴の下では動きたくないな」
――生意気。思いながら振り返ると例の新人が立っていた。資料の中の彼はもう少し幼い。目の前の彼は青年になりつつあるといった感じ。
「何なん…ッ!?」
―ッ…クン…。
「…っ…ぁ!!」
「何?」
――ドクン…
「オマエ…」
――ドクン
「何も感じねーってば?」
――ドクン
「何をだよ?」
魂の響を。
――ドクン
コイツがあの人だと訴える。
そんな事あるわけないのに…。
でも…
身体が震える。
全身が心臓のようで。
血液が沸騰しそうだ。
頭じゃ分かんないけど、心が痛い程叫ぶから
少し信じてみようと思った。
こんな現実味のない事を。
「いや、分からないならいいってばよ。
初めまして、だな。オレはうずまきナルト。早死にしたくなくなったから、もう文句ねーってばよね?オレの下で働いてもらうぜ」
オレの言葉に彼は呆気にとられたらしい。
オレは、くすりと笑ってそれに応えた。
ふと、あの人が生前に言った言葉を思い出した。
――魂の転生。
貴方に言われた事を疑った自分にごめんなさい。
今は信じられる。
そういえば、あの人はどうやって、どんな言葉でオレを落としたっけ?
今度は逆だよなー。
さあ、どうやって口説こうか?
20080929
生きることが楽しみなのは何年ぶりだっけ。