短編

□前髪10Centi
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ジャー
丁寧なシャンプーのお陰で指通りはなめらからしい

節くれだった指が
耳の裏の泡までも除き取る。
野郎の頭なんだから、もう少し乱暴に扱っても良いのに


《ユーリ、熱くないですか?》


『へーきー
俺、熱めが好きだからー』


不思議だ
普通、美容院(俺はいつも床屋ですけどっ!!)でシャンプーしてもらう時
気まずさ故に、目をつぶってガチガチに緊張してしまう
なのに今は心持ち穏やかで
安心さえしている
コンラッドだからかな?

寧ろ
目が合えば嬉しいくらいだ
…俺も末期だな…
こんな時ばかりは魔王の位にも感謝してしまう

地球のみなさーん!
眞魔国にお越しの際は是非バーバーウェラー卿まで!!
ダジャレが寒いのは勘弁してあげてください。


《はい、終わりですっ》


キュッキュッっとシャワーが止められて、
ギュンターが愛用するバスタオル(汁を拭くため?)と同じ種類のを被せられる


ワシャ

ワシャワシャ

ワルシャワワルシャワ


俺は、椅子から降りて部屋中央にあるソファーに座り直した
ワシャ
コンラッドが作った手櫛を
出来るだけ壊さないように


《ユーリこれ使ってください》


どこから取り出したのか、
コンラッドはドライヤーを持って隣に座った
手乗りサイズでは無いが、ごくありきたりなドライヤーだ


『えぇー…。
それアニシナ印じゃんか!!』


赤黒く光るボディ
側面にはダイイングメッセージの様に刻まれた、最強最悪の紋章が…触っただけでも、呪われる気がする
はたして 温風が出るのか、怨風が出るのか…。


ゴォー
コンラッドが手に当てて、熱くないか(安全か)確かめている


《いやだなあ、そんな心配そうな顔しないでください大丈夫ですよ。
手動で巻いてきたから》


ゴムでも使ってあるのか、
アニシナさんの手動式製品とは珍しいものだ
息一つ乱していない彼だが、
よく見れば額に 流れる汗が一筋俺が見てないところで必死に
取っ手を回してたのだろうか


『サンキュー、コンラッド!』


俺はタオルをポイッと放る
断じてポイ捨てでは無い
だが、コンラッドの
可愛い行動のせいで
今日はもう ニヤニヤが止まら無いだろう


ズボッ


《…ユーリ?》


俺は勢い付けて、コンラッドの胸に抱き着いた。
少しビックリした顔が面白い


『ついでに乾かしてよ、
美容師さん?』


だから
今日一日だけは
存分に 甘えてやる事にした




End



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