キリリク

□実の所 大出費!
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雑踏の中彼を探す。
目に焼き付いているクマミミの付いた毛糸の帽子、せっかくの美しい瞳立を隠すためのどでかいサングラス
ナンパされても道を聞かれたとしても、それが善良な市民であれば良いのだが

…立ち止まる子供達を掻き分けて、広場をグルっと一周した
それでもというか やはりユーリの姿は見つからない


「ちょっと、そこのお兄さん!!」


街全体の地図を見上げていると、すぐ隣の露店の婦人がニヤニヤと声をかけて来た


《…何か?》


「恋人さんとはぐれちゃったのかい?」


当たらずとも遠からずかな
ユーリは女性ではないけどね。
内心ひそかに呟くいた
俺の姿を頭から爪先まで見回した彼女は、奥の棚からなにやら重厚そうな箱を目の前に出してきた


《これは?》


「お兄さん、男前だからうちの極上の品を特別サービスで売ってやろうじゃないか!!」


そう言って女将が箱を開けると、数個の指輪が敷き詰めてあった
昼下がりの日光で
光り輝くシルバーリング。

促されるままに手にとれば、細身のシルエットがユーリに似合いそうだった


《この重さだと、本物の銀を使っているんですか?》


「あたりまえさッ そこいらのパチモンとは、訳が違うよ!んで、どうだい兄さん?安くしとくよ〜」


《このくらいのサイズはあるか?》


親指と一差し指で小さな輪を作った。ユーリの指は、大体この位の太さだっただろう


「9号……くらいかい?
はいはいっと…。これだね、名前でも掘るかい?」


《名前…TO・YULIと彫ってほしいんだが》


「TO・YULI?ヘェ…魔王陛下と同じ名前なんだね。」


本当は自分名前を彫りたいが
そんな事をして、ユーリがもし付けてくれなかった
と思うと…
まったく、俺も臆病になったものだ。


《…あと、俺の指にはまるサイズはあるだろうか?》


「うーん…お兄さんの骨張ったのに合うのは…あら、ごめんなさい売れちゃったみたいだわ。
掘り終わるまで、そこでお待ちになってて」


女将は小さな指輪を持って、どこかへ行ってしまった。目で跡を追えば、奥でゴツイ男が彫り物をしている
きっと他にもだれか 愛しい人の名を彫らせているのだろう
ペアリングなんて、ロマンチックな物にはならないが


これで少しでも気持ちが伝われば良い






 
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