連載

□彼の恋を願うまで。
3ページ/10ページ





「一人で行かせてごめん…」


ウルリーケによる呪文や水しぶきの音で、村田の声がうまく聞き取れなかった
お前までそんな心配そうな声だすなよ。
一人でお使いくらいできるさ〜
ムラエモンは、工場にでも行って整備して来いって!
ってゆーか、妹いたっけ?


「必ず…どうにかするから」


『え?』


体中に魔力がみなぎってきた
そろそろ、出発出来る頃なのか
沸き上がる水は威力を増し、もう皆の姿が見えない
ただ地球に戻るだけのスタツアとは違うらしく、頭の隅が鋭く痛んだ


『村田…何て言ってんの…?』


ザーザーザー


「例え君が気付かなくても…
僕は…君のことが……君だけの……」



バチンッ



正面から緑色の閃光が散って、俺は巻き上げられている水の根源に意識から吸い込まれて行く
最後に魔力を送り込むだのは、村田だろう。

頭の先から踵まで、引き裂かれるような激痛が走った瞬間、凄まじい量の魔力が全身を駆け巡って、俺は侵してはいけない時空の狭間に踏み込んでいった


『うわあああぁぁ―――…』








なんだ貴様…
こんな所に迷い込んで

あぁ、27代目の魔王か…?
これはまた、奇異な姿をしておるのぉ。
聞いていおるぞ 過去の世界に用があるとな


ところで、何を望んで時を越えるのだ?
ウェラー卿コンラート?
あぁ…右腕の後継者か

そう怒るな 分かっているとも
もう箱が開くことは二度と無いのだろう?
彼の後継者としての印も、もうすぐ消える

よし。
同族のよしみだ、力を貸してやろう
これからも主には、せっせと働いて貰わなければならないからな

行くが良い
25年前の世界へ







 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ