連載

□その恋に気付くまで。
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「フォンシュピッツヴェーグ卿
ツェツィーリエ

フォンヴォルテール卿
グウェンダル

フォンビーレフェルト卿
ヴォルフラム

ウェラー卿
コンラート

フォンカーベルニコフ卿
アニシナ

私、フォンカライスト卿
ギュンター

そして 猊下。」


ギュンターが厳格な声色で
各貴族の名を呼ぶ
居合わせ無かった貴族は、後日に後回しだそうだ
呼ばれた者は、王座に座る俺の目の前に来てこう誓うらしい


我が魂は 魔族繁栄の為、貴殿の意のままに
永久の忠誠をお誓い致しましょう




小刀で切り付けて出た血を黄金のゴブレッドに垂らながら
……すすすスプラッター……


「し・ぶ・や!
僕の中国四千年の歴史は、ぜぇーんぶ君の物だよ(笑)
あ、でも期末テスト前日に呼び出しても学力は上げられないからね☆」


と村田が最後にウィンクをして
ゴブレッドは満杯になった
とうとうやってこの時がやって来てしまったのだ…。
もちろん中には元から、銀色の液体が入っていて、(アニシナ印だったらどうしよう…)血液の色は出てないけど

ホントウニ ノムンデスカ?

口には出さないが、さっきから冷や汗が引かない…
背中が気持ち悪いです
皆さん方は黙って 俺が飲み干すのを待っていらっしゃる
いや……アニシナさんの目は絶対に科学者モード!!


『…っうぅ!』


ゴブレットの底にはお疲れ様と一言書いてあった
俺、(鼻を摘んで)一気飲みしてやったんだぜ!




赤誠の儀が終わって数刻、夜のロードワークにも行かず
俺は枕に頭を埋めていた。

『おぇぇぇぇ…』

あまりの辛さに、吐き真似をしてみる
でも何も出てくれない

《陛下…お水をどうぞ。》

ただの水が、ものすごく美味しそうに見えた
曇り一つ無いグラスには、俺とコンラッドだけが歪んで映る


『サンキュー、コンラッド…
まだ頭の中グルグルしてるみたいだ…さすがアニシナさんの血
体中に、警報が鳴り響いているよ!!』


生まれた時から人間兵器。
言葉は悪いが、毒女にはピッタリみたいだろう
寧ろ、喜んでくれるに違いない
あぁどうか神様……グレタが
彼女の跡を継ぎませんように…!!
俺は水を一口飲み、ベッドに倒れ込む
あのあと、延々とギュンターの褒めちぎりを受けたから体がヘトヘトで悲鳴をあげてる

《今夜は、このままお休みになりますか?》


耳鳴りがしてよく聞こえない
頭痛もするみたいだ

『あぁ、そうするー…』

小さな声で返事をして
フワフワの布団を頭から被る
ギーゼラを呼んで貰おうかと思ったけど、その時にはもう
体を動かせなくなっていた。


《――なら―――を―――――ですから》


お休み、と一緒にコンラッドが何かを言った
俺がそれを聞いたのは
夢の中だったけど




ここは?ドコ?
床、冷たいな
目の前の部屋の窓は全開で、カーテンがサラサラ揺れていた
まだ夜中なのか 城内は静かだ。俺はパジャマのまま、その部屋を覗いている
部屋の主は 気付いていないのか一度もコチラを見ていない。
月明かりに照らされてるのは、

ウェラー卿コンラッド

彼はゴブレッドを手にしていた
そして、真剣な眼差しで見つめている
何をしているのだろうか?
瞬間、 コンラッドは
ゴブレッドの淵に キスをした

『…っつ?!』

彼の行動に驚いた俺は、問い質さずにはいられなかった
素早く体を動かし、コンラッド前に出ていく


『コンラッドっ…?
なんで…そんなのに…キスしてるんだ?』


ゆっくりと、
コンラッドが振り向いた
視線が交差して、一歩一歩 こちらへと近づいてくる
カツ
 カツ
  カツ
   カツ
カツ
息が掛かる程近寄ったあいつは、少し笑いながら

《ユーリ、そんな薄着では風邪を引きます》

と俺の頬をなぜた
ひやりと神経に何かが伝わって行くようで、体が拒否する

ドンッ

『質問に答えろよっ』

突き飛ばしたはずなのに何故か腕を抱き取られ、俺は彼の胸の中で息を吐いた
コンラッドは爽やかスマイルを崩さない


《何故って…当然でしょう?
愛しているから》




「ユーリ、ユーリ、ユーリ、ユーリ、ユーリ、ユーリ、ユーリ、ユーリ、ユーリ、ユーリィィィィィィィ!!!」


『うわっっ』


目を覚ますと、ヴォルフがダイブをかます瞬間だった
……夢オチ?
出来ればもっと、しとやかに起こしてほしいものだ
骨を強く打った…


『貴様はすでに…死んでいる』

バタ

「お前が死んでどうする!!
まったく…昨日の今日で
少しは大人に成ったかと思ってたが、相変わらずのヘナチョコだな!!」


俺の頭をガシガシと細い指が掻き乱す
つつつつ爪が長い!!
頭皮がっ頭皮がー!!
俺が将来の 育毛事情を心配していると、わがままプーは真面目な顔をして言った。


「うなされてたぞ」

あれ?なんかデジャビュだ

『マジ?それたぶん、アニシナさんのせいだわ。
挽き肉マシーンに引きずり込まれていたのかも…
俺的には、ツェリ様と熱々デートが希望だったんだけどね』


自分で言ったが、顔面蒼白になってしまう
どっちもどっちで怖い。


「…コンラートの名前を、何度も呼んでいた」


あぁ
やっぱりあれは夢だったのか
なんだ、俺…
全然気付いてなかったし

『なんの夢かなー?
全く覚えてないんだよよ。』


俺は目を擦りながら、ベッドからはい出た
太陽はもう真南にある
俺の心境の変化に気付いたのだろう、ヴォルフの眉間にシワが何本か見えた


「嘘だな。
僕に隠し事をするな!
例えコンラートの事でもっ《俺の事がなんだって?》


焼きたてのパンの香ばしい匂いと共に、眞魔国一のモテ男が部屋に入って来た


《おはようございますユーリ》

『…あぁ…』



何故だろう
彼の付けた名を
久しぶりに聞いた気がした



End



 
 
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