短編

□前髪10Centi
1ページ/4ページ





チョキチョキチョキチョキ

もう何時間も
この音を聞き続けている
時折、首にかすめる 彼の手がくすぐったい

チョキチョキチョキチョキ。

床にはもう 結構な量の黒髪が
散らばっていた
ギュンターが 一本一本、
保存の為とかこつけて 拾い集めているが…


『ねー…コンラッド、切りすぎじゃね?』


横から名付け親が ヒョイと顔を出した


《そんなことありませんよ。
 自分でも惚れ惚れするような出来栄えです!!》


元から、どちらかというと
髪の量は多いのだが…
鏡が目の前に無いからか、
余計に不安になってしまう。
ザクザクとコンラッドはハサミを動かして行った
器用そうだが道具を置きに来たメイドは去り際にクスクス笑っていた
なんで!?


ふーむ…
コンラッドは、唸りながらハケで切った毛を掃い始める

どうやら完成したらしい


《よし、じゃあシャンプーをしましょう》


言われて
椅子の下にある引き金を引き ガクンと後ろに倒された。


『マジ美容院みたいだな〜』


ちなみに 背もたれの後ろにはアニシナ印
コンラッドが、地球から戻って来てすぐ記憶を頼りに作らせたらしい
だから形的には 15年前もの
古いというよりも枕の所がゴツゴツして痛いよ
でも…まぁ、ちゃんとグウェンダルが試しているのだから、安全のだろう



シャカシャカ


《陛下ー、痒いところはございませんか?》


天井を眺めていたら、花の香りと共に上からコンラッドが覗き込んだ


『つむじの辺りかなー?
ってゆーか、陛下って言うなよ名付け親!』


《今日はお客様ですもんね》


のんびり口調で彼は言う
『髪を切るのは馴染みの床屋しか行かない』
と言ったらコンラッドに
《貴方の髪型は、カリスマ美容師が作っているのだと思ってました》
って笑われてしまった。
ってゆーか、カリスマという単語を知ってんの!?


シャカシャカ

シャカシャカシャカ
優しく掻いてくれたので、マッサージみたいだった
思わず欠伸を噛み殺す


『コンラッド店長は…にゃんでも出来るんらねー…。
なぁ、そのシャンプー良い匂いするよな〜
もしかして美香蘭?
だったら、ぶちギレるから』


ツェリ様には悪いが、もう婚約者を増やすわけには行かない。


《やだなたぁ、違いますよ
俺に魔力が有れば、そうしていあけどね》


得意の爽やかスマイルが
数10cm上から降ってきた





 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ