キリリク

□魔法のキッス☆
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ザザーンザザーン。



押しては返す荒波。


聖砂国へ向かう、ある船の一室


ベッドの端では、
 なにやら従者と主人の会話が繰り広げられていた。




『俺の名前は、
ウェラー卿ユーリ??』



まだ渇かない海水が、より黒髪を深いものにさせている。



 《そう!そして、貴方は俺のワイフです!!》


言うと同時に、コンラッドは
困惑気味のユーリの手を取り、
 必殺の爽やかスマイルを繰り出した。


『妻って…
俺、男なんですけど!』


《愛に障害は付き物ですよ。》


『絶対何かの間違いだって。』


《ア・ナ・タ・☆と呼んでみてください!》


隣で座るコンラッドから、
少し身を引くユーリ。


実を言うと…

ユーリは コンラッドに海に落とされた衝撃で


記憶喪失になってしまったのだ


《忘れてしまったんですか?
貴方から、俺の頬を叩いて求婚してきたというのに!》


『…覚えているような、いないような…』




事件の元凶のコンラッドは、記憶を取り戻させる為に 延々と語って聞かせた。


貴方とは裸の決闘もしました。

豪華客船で社交界デビューもしましたねぇ〜

結婚式のファンファーレ用に 魔笛も探しに行きましたし、

新婚旅行で
温泉郷にも行ったんですよ!

まぁ…俺達の幸せを嫉むサラレギーとか言う奴の陰謀で、

少しの間、引き離された事もありましたが…。

ですが、愛し合っている二人を一体誰が止めることが出来るでしょうか!!



と煮えたぎる情熱口調でまくし立てていたのだか、


「あのさぁ、記憶を捏造するのは良くねぇんじゃないか?」


側にいたヨザックが、冷静に言った。



《捏造?心外だな。
………話を端折っただけだ。》


ユーリに向ける笑顔は絶やさずに、吐き捨てる様に言う。
 暴力夫の印象を与えるのは、離婚の原因になりうるからだ。



「あとでバレても、俺は 知っりませんよ〜」


手をヒラヒラさせて部屋を出ていこうとするヨザック。


《お前も話を合わせるに決まっているだろう。》


ユーリに見えない角度で、鳩尾に一発入れられる。

さすが元軍人。

風が抜けるような音しか聞こえなかった。





 


 
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