連載

□その恋に気付くまで。
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眞魔国にも春一番が吹いていた
どこからか花の香がして、無意識の内に鼻歌を唄いそうになる
良い風だなぁ〜


『いい加減、安全にスタツア出来ても良いはずなのに』


俺は水の滴った前髪をかき上げて言った
ここは、血盟城内の噴水。
俺を呼び寄せた張本人、ギュンターの姿は見えない
のんびりくつろいでる訳にもいなかいので、いそいそと水からあがった


「そろそろ、空を飛ぶぐらい覚えたら?
四天王中にレポート書くのは自殺行為だけど。」


村田
お前って意外とゲーマー?
そう、今回のスタツアには
大賢者ことムラケンも一緒。
とりあえず
俺達は中庭を通って城の大広間に向かった。


『あーあ…試合、良いところだったのになぁ…』


「渋谷、諦めなよ
9回裏で、代打さよならホームランなんて出やしないさ」


『あのなぁ、お前がビール売りのお姉さんをナンパしなけりゃ ビールタンクが破裂することなんて、無かったんだぞ!!』


「うーん。
…ビールの臭いは取れそうに無いなぁ…ふんふん」


『無視かよっ!』


俺のツッコミさえもスルーして村田は大扉を開けた
それと同時に
誰かが、天井から垂れ下がるヒモを引っ張るのが見えた。


タラララッタラー


『へ…猫型ロボット?』


魔王陛下バンザーイ!!


『うわっ』


頭上の超特大くす玉(側面にはアニシナ印っっ)が割れて、
 紙吹雪が降って来た。


「陛下〜!!猊下〜!!
お待ちしておりましたよー!」


超絶美形の宰相が
ツユダクで駆けて来た。
両手広げて、Welcomeモードだ。飛び込みたくない飛び込みたくない……過度のスキンシップ


『おちおち落ち着けってギュンターどうしたんだ?
なんかのお祝い?
もしかしてあんたの誕生日?
ごめん、一体幾つになったんだっけ?』


鼻提灯を二つ作り、ギュンターは頬を擦り寄せてくる。
うぅ…
キリンに舐められてる気分…。
ズリズリ


「お帰りなさいませ陛下、
貴方の御帰還を心より祝福申し上げます。」


俺をキリン地獄から救ったのはコンラッドだった。
苦笑いでギュンターの脇から彼の手を取る
温かいいつも通りの手のひら


『陛下なんて呼ぶなよな、名付け親!』


《申し訳ありません陛下。今日に限り、こう呼ばせてください
訳は後ほどきちんとお話しますので》


爽やかスマイルで
さりげなく手を離された

『今日だけ?なんで?
やっぱなんかあんの?』


心なしか、コンラッドの態度はよそよそしかった
いつか見た、時代劇みたいだ。真面目に角さん的な?


《陛下実は…「こんのっヘナチョコー!!」


数メートル先で、仁王立ちをしているヴォルフラムが
閻魔大王の如く怒鳴った
なんでこいつは笑顔で俺を向かえられないんだろーか
別に良いけどさ

「うわっ」

声量の振動で、村田の眼鏡が割れた
電車が通過したんか!!

『村田っ、待ってろ!
今 いい加減なキズぐすりを着けてやるから!!』

眼鏡にも効くのかは不明だが


「…っこの尻軽っ!!
今日が何の日か、分からないと言うのか!!!」


『うるさいなーヴォルフ、ご近所さんの迷惑も考えろよな〜
村田の顔の一部を、破壊したんだぞ!』


ギュンターが怖ず怖ずと
老眼鏡を村田に差し出す
度の問題以前に、汁っぽくて使え無いようだが
鼻にティッシュを詰めたギュンターが、真顔に戻った


「おめでとうございます、陛下
本日は陛下が眞魔国27代魔王にご就任なされて、
ちょうど一年目に当たります」


ギュンターからヌルヌルしてない清潔なタオルを受け取る
いや、ギュンターの手がもうヌルヌルしてるから…ダメか…


『一周年記念!?
…だから俺を呼んだんだな?』


「そのとおりでございます!
つきましては
今夜中に赤誠の儀を行い、数日以内に、国を挙げた一周年記念パーティーを催す予定です!」


『記念パーティーって…また安易な名前〜
でもさ、赤誠の儀って何?』


ギュンターは、分厚い本を胸元から取り出した
そんな物が入っていたのか…通りで巨乳だと思ったよ
固かったけど
期待虚しく固かったけど


「赤誠の儀…戴冠式にて陛下は、魔王に就任されました。
しかし各貴族には、忠誠の誓いを受けさせておりませぬ。
…故に自らの血をもって忠誠を誓わせる儀式でございます!」


取り出した本を小脇に抱え、悦に入っている。
使わないのかよっっ
インテリ俳優の萌え的眼鏡か!


『血って……具体的にどうすんの?』


「陛下にグイッと…」


飲むんですかー!!!
魔族 吸血鬼伝説がここに誕生したのだった。
飲むのは俺だけどね!!





 
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