黒の死者 旧

□紅孔雀
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思わず身を竦める。
ジスタは慣れているのか、音がした方を見ている。




「…麗矢、頼みがある。」




どんどん音が大きくなる。

この音は、壁を壊す音。




「なんですか?」




声は震えていた。



















一際大きな音を立てて壁が壊れる。
厚いレンガとコンクリートで造られた壁は、足の骨を潰す程硬かったようだ。


頭のない骸骨は辺りを見回す。



目標の男を殺すために。






「こっちじゃ。」



声が聞こえた方を見ると、地面に座り込んでいる標的がいた。

標的が動けない事が分かり、骸骨はゆっくりと近づく。




昨晩とはちょっと違うなとジスタはこっそり思った。






(まあ、違う方がいいか……)




近づいてくる骸骨から目を逸らす。



この部屋は―――――




「………また会ったな。」






気付けば目の前にいた。


軽く笑いかけても反応がない。
頭を砕いてしまったことを少し後悔する。



「返事なし……っか。」




困ったのう、と笑うジスタを掴み上げた。


骸骨の表情は分からない。

哀れむように骸骨を見た。




「可哀想じゃな……ガキが生きてたら、貴様の姿を見てどう思うのか。」




その言葉に反応したのか、一本の腕で高々と持ち上げられる。


息が苦しい。





「準備できました!!」




その声と共に足下が冷たくなる。



聖水だ。



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