黒の死者 旧
□利用価値
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「はぁ………」
何回目かの溜め息に麗矢は苦笑した。
窓際に体を預け、空を見上げる。雲に覆われて三日月しか見えない。
カツ…カツ……カツカッ……
「……………?」
外から不規則な足音がする。
かなり疲れているようだ。
「誰だ……?」
窓の向こうを目を凝らして見ると年老いた老婆の姿。
真夜中に不釣り合いなその姿に麗矢の頭が冴えてくる。
「(事件か……?)」
すぐに着替えを済ませると、ドアを静かに開けた。
前を歩く老婆は今にも倒れそうだ。
麗矢は早足で老婆に追いつくと、後ろから声を掛けた。
「……大丈夫ですか?」
老婆は肩を震わせながらゆっくりと麗矢の方を向いた。
着いた場所は昨夜と同じ離れの屋敷。
そこから少し離れたとこに二人は立ち止まる。
フィオールは嬉しそうに叫んだ。
「彼を連れてきたわ!!アンはどこ!?」
ジスタは辺りを見回す。
気配を消しているのか特定することができない。
「ねぇ!!アンを渡して!!」
帰ってきた声は―――――
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