黒の死者 旧
□紅孔雀
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やっぱり、何か隠している。
屋敷の中に入った途端、膝を付け、荒く息をする程弱くはなかった筈だ。
ジスタを壁に凭れさすと、麗矢は表情を硬くした。
「…あの老婆からすべて聞きました。」
棒読みにならないように気を付ける。
今の主人には分からないと思うが。
「主人が知っていることを教えてください。」
もちろん出任せだ。
ゆっくりと溜息をすると、ジスタは麗矢の方を向いた。
強く蹴られたのか、息をするだけでも辛そうだ。
「……ガルトの事は?」
「えっ」
思わず間抜けな声を出してしまった。
ジスタはその様子を見て、軽く笑い出す。
「やっぱり嘘か。全ては聞いてないじゃろ。」
一気に顔が熱くなる。
謝ろうとしたが、ジスタも嘘をついていた事を思い出し、黙っておいた。
「………来たな。」
そう呟くのが聞こえたのと同時に、鈍い音が外から聞こえた。
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