笹塚衛士連載
□ネーションを越えたネーション
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「‥見てません」
私はいわゆる事情聴取を受けていた
前の椅子には虚ろな目の警察官(刑事?)
てゆーかこいつなめてんのか?
来た時は「大丈夫?」と優しく声をかけてくれ、警察署に着いてからも「着替えなよ」と血まみれの私に親切に服まで貸してくれた
彼の優しい瞳に
すごく落ち着いた
‥のに!!
事情聴取とやらが始まってすぐあの虚ろな目。
声には何の感情もなく、ただ冷たいだけのコトバ
何こいつ、なめてんの?
なんだかすごく腹が立って自分のことは何も話さずに必要なことだけ言って帰ろうと思った
こんなやつに何も話したくない
「君高校生だよね?」
「‥‥」
「‥今日金曜日だよね。学校は?」
「‥‥」
「‥そうだ。名前言ったっけ?俺、笹塚ってゆーんだ。よろしく」
「‥‥」
笹塚と名乗った刑事は延々とあたり触りのない質問を繰り返す。
―くだらない
無言を突き通す私。
刑事さんは、はあ、とため息を一つつくと、急に真剣な顔で言った
「‥被害者の女性を刺した人を見た?」
「笹塚さんっ!いきなり「お前は黙ってろ」
石垣と名乗った(パトカーの中で)若い男は突然の笹塚の核心をつく質問に思わず声をあげた(すぐに黙らされてたけど)
「‥見てません」
さすがの私もこれには答えざるをえなかった
煙草を一本くわえて火を点けると笹塚は紫煙を吐き出した
「‥事件については話すんだね?」
急に見せられた悪戯な笑みに私らしくもなく動揺した
睨みつけてやると
笹塚はふっと微笑んだ
「‥ごめんね。怖かっただろう。事情聴取はさ、自分の感情に流されちゃいけないから。ごめんね」
そういうとふわっと
大きな手が私を撫でた
瞬間、力が抜けた気がした
あんなに腹が立ってたはずなのにすごく安心した
最初にあったはずの
優しさいうものが感じられなくて
最初からのギャップに
怒り以上に強い不安を覚えていた
そんな私に気づいてたのか
そうじゃないのか
兎に角安心して
訳が分からないくらい
涙が止まらなくなった
初対面なのに
不覚にも彼にすがりついて泣いてしまった
私こんなに泣き虫だったっけ?
→後書き