笹塚衛士連載
□ネーションを越えたネーション
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いくら順応性が高い私といえども限界がある
あの悲鳴の後
気になってホームに戻ると
そこは血の海
幸い電車は遅れていて
次の電車に乗っているはずの何人かは
この血まみれのホームを見なくて済んだ
どうやら人が刺されたらしい
‥いつものことなのだが。
こういう時の私はなぜかいつも冷静で。
(やっぱり順応性高いんだろうな)
今日も例の如く
冷静な対処をした
刺された女性の傷口を手で押さえ、タオルで刃物の柄を持ち、傷が広がらないようにした
こういうときは
刃物を抜いてはいけないとどこかで聞いたことがあったから
そして近くにいたお兄さんの目を見て救急車を呼ぶよう頼んだ
その隣にいた女子高生(私が言うのも変だけど)に警察を呼ぶように言った
一連の作業を終え、必死に傷口を押さえ続けた
「‥かん‥た‥‥りょ‥う」
彼女が死にそうに
でも間違いなく泣きそうな声で言った
―死んでしまう
思った瞬間、サイレンの音とともに救急車とパトカーがほぼ同時に到着した
彼女の目から涙が一筋の影を落とした
→後書き