短編集

□空がこんなにも灰色で重いのは
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雨上がりの空。
何時も隣にいたはずの君がいなくって。
冷たい風が僕の前髪をかきあげていく。
鼻先を冷たい水が一滴、掠めていった。

 *空がこんなにも灰色で重いのは*

夢だ、とどこかにある理性が告げている。
でも、色もついて感触もはっきりとわかるこの世界を、夢だと認めない自分がいる。
それならば、夢と現実の境目はどこなのだろうか。
実は今まで夢だと思っていたことが現実で、現実だと思ってたことが夢だった、なんてこと、否定する材料が見つからない。

一人っきり、なんて、彼と出会う前に戻っただけなのに。

僕は今まで自分でも頭が良い方だと思ってた。
でもやっぱり違うのかも知れない。こんな簡単な事がわからなかった、なんて。
彼がいないといまいち調子がでない。

大切なものはなくなってからわかる、なんて本当だったんだ。

ああ、狭いはずの世界で君を探してるのに見つからない。

本当はわかってる。

君は僕をかばって僕の前で倒れた。

でも普段じゃ起こり得ない事だから、僕はそれを拒んでいる。

あぁ、雨上がりの空。
僕は一人で立っている。
これは夢なのだろうか現実なのだろうか。
僕はそれを証明する手立てをもっていない。
冷たい風が頬の雫を拭う。

もう一雨、降りそうだった。


【空がこんなにも灰色で重いのは】


(嗚呼、君が見当たらないからだ)


end
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