短編集

□Sono felice.
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「・・・Sono felice.」
「へ?」

*Sono felice.*

僕がソファに寝転んで本を読んでいた時だった。
同じくパソコンの前の椅子に座りぶ厚い本を静かに読んでた創也がふと無駄に響く声でそうつぶやいた。
「ん、いやそろそろ内人君がこの砦に来たころから一年になるな、と思ってね」
今までの事を思い出していたらこの本の内容と被ったんだよ、と薄く笑う創也。
「ちなみにどんな本なんだ?」
僕が聞くと、主人公とヒロインが突然出会って冒険をするファンタジー話だと教えてくれた。
「めずらしいな、お前がそんなの読むなんて」
自分の読んでた本に目を戻しつつ呟く僕。
「失礼だな。僕だってたまにはこう言うのを読むさ。実際小学校の時好きだったのはトムソーヤだったりハリーポッターだったりしたしね。それにこれはイタリア語の源本だ」
ハリーポッターと聞けば映画しか思い浮かばずイタリア語なんて興味ない僕はあいまいに頷いておく。
「それでこの最終章で、ヒロインが主人公に想いを伝えるシーンがあるんだよ。そして主人公の青年はこう答えるんだ。"Sono felice."とね。
そうだな日本語に直すとさしずめ・・・」
「 」
わざわざ耳元でささやいてきて思わず赤くなる頬。
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