短編集
□きっと・・・
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「綺麗だね〜!!」
「うん。」
ベンチに並んで稜子と武巳は桜を見上げた。
風に舞うように散る桜。
稜子は手を伸ばして掴もうとしている。
「ん〜!難しい・・・・・」
中々掴めなくてむくれる稜子に苦笑しながら、武巳は手を伸ばした。
「・・・・・・見てるかな、どこかで。」
誰がとは言わない。
稜子は黙って手を下ろす。
「・・・・・見てるよ、きっと。」
にっこり笑う稜子に同意するように頷く。
「見てるよな、この桜。」
黒い無表情な少年も
本が好きな優しい少女も
強かった彼も
儚げな少女も
「見ているよ。」
手に舞い込んだ桜を包み込み武巳は笑う。
稜子も頷くと笑った。
消えてしまった彼ら。
でも、同じ物を見ている―生きていると確信を持てるのはきっと・・・・・・・・・
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