『番外*花町』
□『番外コネタ 其の五』
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いわゆる、発情期。
人獣は、人間のように年中無休の発情期とは違って、春時が一番その衝動が襲う。
エドワードは去年まで何の事もなかったのだが、今年は成人する年なので恐れてはいた。これを押さえ込むのはかなり大変なのだ。
発情期でなくとも性交はできるし、その気にはなる。
しかし、発情期というのは子孫を残すための本能が先に立つから、自分の心持ちとは別のところで発動してしまう。
たとえば。
「エドワード…。開けてもいいか?」
「――み゛!?」
ロイのような大人の甘ったるい声とか。
やだやだやだやだ。
エドワードは必死で頭を巡る様々なロイの仕草やら声音やら、手の感触やらを振り払おうとした。
このままでは苦しい。
でも何をどうしたらいいのかわからない。
「エドワード…?オリヴィエを呼ぼうか?」
「…んん!や、だ!」
「しかし…」
「旦那……」
「ん?」
ビク、と手の中の違和感が跳ねた。
やっぱり。
ロイの低くしっとりとした声はエドワードのそれを刺激するらしい。
「……あ……?」
もぞ、と膝をすると、痛いくらいに張り詰めた下肢から温かいものが手についた。
ぞく、と腰が震え、これはロイの声に反応しているのだと、エドワードの混乱した思考でもわかってしまった。
今日はロイが来ると知っていた。朝から落ち着かなくて、機嫌が悪くて、まるで雌にある月のものが来る時みたいだなんて姐猫たちにからかわれていた。
発情期なんじゃないか、と言われてもどうにもピンと来ないでいたのだが、まさかロイが来た事が引き金になるなんて。
「…入るぞ?」
「だ、駄目だってば……っっ」
そんな真剣に心配した声にまた、ひく、と幼い下肢が強張り溢れた液体に、エドワードがぐるぐるする思考の中で限界まで体を丸めて叫ぶ。
こんなところ、絶対に見せられない。
「くん、な!!」
「しかし…」
「ん、みゅぅ……っっ」
ロイの声が腰に響いてエドワードがきゅうきゅうと荒い息を吐く。
まるで耳元で囁かれているような錯覚に、エドワードは自分の息が喘ぐように変わっていくのを感じ、両手で下肢を押さえた。
旦那の声で高ぶるんなら。
エドワードはもやの掛かる頭で出した答えを否定しようにも、ロイの声とこの部屋の匂い……花蝋燭……がこの状態を開放してくれるのだと悟り泣きたい気分になった。
「ぅぅ〜〜……」
噛み締めた歯の隙から呻いてエドワードがきゅ、と手の中の熱を包む。
「…んっ」
自分の手なのに何故かもの凄く恥ずかしい。
「……は…」
ゆっくり、上下に擦ると背中がぶる、と震えた。先端から溢れていたものは何だかねっとりした感じで指に絡み付き、エドワードは自然とそれを塗り込むように指を滑らせた。
じわじわと酒が回るような悦が頭の中に広がり、ロイの弧を描く唇を思い浮かべるとたまらなく溶けそうな気になる。
吐息を吐く小さな唇から酒の混じる液が零れそうで、エドワードはぺろ、と唇を舐める。
もう、…少し…。
「ん、ん、…ぅん…」
「エドワード…?」
「……!」
再度掛けられたロイの声にエドワードが喉の奥で悲鳴を上げた。
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