『ひっ越し後』
□『猫のきまぐれ』…08/2/13
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カチャ
「…終わったのか?」
バスルームのドアが開く音に、マスタングが本を閉じて立ち上がる。
バスタオルを渡してなかったから、棚から新しい物を取り出してドアまで歩いて行く。
「な、なに…っ」
「何、とは?」
扉をいきなりガン、と開け、マスタングがバスタオルをエドワードの頭から被せて拭き始めた。
「きちんと拭かないと風邪をひくだろう。せっかく暖まったのに」
「自分で…拭くって…っ」
「これくらいさせたまえ。…さっきからお預けをくらって私は機嫌が悪いんだぞ」
「…!」
力を入れて拭くマスタングは、確かに不機嫌そうで、一瞬エドワードがそれに飲まれそうになって抵抗を止めるが、むずむず、と頭をもたげる悪戯心にまたジタバタし始める。
「やめろ!触んな変態っ」
「〜〜〜かりにも君の恋人なんだかね、私は」
「…ぎゃっ」
手に力を入れるマスタングの不機嫌な声はエドワードの気を良くする。
思わずバスタオルの中で笑いだし、エドワードはマスタングの胸に倒れ込んだ。
「こら、拭けないだろう!?」
むぎゅ、と抱き付いてくるエドワードに、マスタングはどぎまぎする気持ちになおさら声を大きくする。
「んだよ〜」
「なんだ」
ぼふ、とバスタオルからエドワードが少し色付いた頬の顔を出して目が合い、お互いにちょっと眉根を寄せる。
「服は乾かないから、まぁとりあえず私の物を着ていなさい」
視線をそらしたのはマスタング。
バスタオルをエドワードに渡して寝室の方へと行ってしまう。
「…」
膝上までくる大きなバスタオルを中途半端に体に巻いた状態で、エドワードは少しむ、と顔をしかめる。
ほんとに、不機嫌。
* * *
「大佐ー、お茶〜」
「…」
ソファで丸くなったエドワードが頭を上げてマスタングの姿を追う。
結局マスタングの寝間着のシャツとトレーニング用のハーフパンツを借りて、エドワードはその上にまたブランケットを肩から掛けてソファにゴロゴロとなついていた。
部屋は温かいから昼寝がしたい。
ブランケットもあるし。
あとはマスタングの膝枕をゲットできれば…。
密かにそんなコトを考える自分にドキドキしながら、エドワードはタイミングを見計らおうとするのに、マスタングは先ほどから洗濯の終わったエドワードの服を干したり部屋を片付けたりしている。
「大…」
自分の回りを歩き回るマスタングの表情は、どちらかと言えばやはり不機嫌だった。
エドワードはブランケットを被ってソファに俯せ、仕方なく足をブラブラさせながらマスタングの読んでいた本をめくった。
コト
「ほら、ダージリン」
マスタングがエドワード用にしているマグカップをテーブルに置き、またその場を離れようとする。
「…ろ〜い〜ッ」
「……」
構ってもらえなさが頂点に達し、エドワードが不貞腐れて足をバタバタさせてソファからマスタングを見上げ睨む。