『ひっ越し後』
□『軍服―昼』
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「…そろそろ」
「?」
すっかりおとなしくなったエドワードにマスタングがクス、と笑って声を掛ける。
「そろそろ…私も限界なんだが」
腰が、と体勢がつらい事を訴えマスタングが体は離さずにエドワードをグイッとイスに押し付ける。
弾力のある背もたれがギシッと鳴って、かけられるマスタングの体重にエドワードが、あ、と身をよじった。
首筋に当たる息。
「そ、そっちに限界なのかよっエロオヤジ!こんなとこで何しやがる!」
式典が終わってまだそれほどの時間が経たない。いつ誰が来るともしれないのに、マスタングは何食わぬ様子でエドワードの首筋から耳たぶへと口付けを進める。
「あんなに可愛い顔を見せられて、我慢しろというのか…?拷問だな…」
「勝手に欲情すんなー!」
「君はほんとにひどい恋人だ」
ジタバタと暴れるエドワードのまだ乾き切らない頬の筋を唇で辿り、マスタングは嬉しそうに微笑む。
「…なら、今夜はアルフォンスに一人で寝るよう言い聞かせて来なさい」
「は?」
「…一人で夜を過ごさせるのは可哀相だが、君は今夜は私の家に来るのだから、仕方ないだろう」
「ーぃっ」
エドワードがバッと顔を赤くする。
アルフォンスに、マスタングの家に行くから一人でおとなしくしてろ、なんて、言えない。
「な、なんか理由考えろよ…!」
「私の家に行く、と素直に言えばいいじゃないか」
「や、やだやだ嫌だっっ」
「…なら、ここで今私を止めるな」
「ーーーっっ」
わがままだな、と言う顔で呆れるマスタングにエドワードがピキッと頬を引きつらせる。
どっちも断崖絶壁のてっぺんに居る気分。
エドワードが怒りとも羞恥とも取れる顔でマスタングの胸ぐらをググッと掴んで声にならない抗議を発する。
しれっとしているマスタングは、フフンと鼻で笑う。
「今夜は、軍服のままで…」
「…?」
まだ気のおさまりきらないエドワードに、マスタングは顔を寄せて囁く。
「しようか…?君はその方が…一段と激しく私を求めてくれるからね…。いとしくて意地悪をしたくなる」
「〜〜〜〜!!!」
どっかん、と音がしそうなほどエドワードが真っ赤になった。
「ほら、図星だな」
「て、めー…っっ」
エドワードが両手でマスタングの軍服を引っ掴んで睨む。
いくら威嚇を試みても、耳まで肌を染めるエドワードに勝機はない。
「ーッ」