『ひっ越し後』
□『副産物』
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ガシガシッと頭をかいてエドワードがそっぽを向く。
下ろした金色の髪が湿気で首筋に沿って流れるのをマスタングは眺めてフッと笑う。
どうしてこんな一つひとつの仕草や姿に目を奪われるのか。
それはまるで自分を見る女性の一喜一憂に似て…。
いや、それ以上か…。
「鋼の」
「あ?!…ううわっっ。冷て…!!」
肌に当たるひやりと冷たい物にエドワードが縮み上がる。
「つ、冷てーよっ。やめろって…っ」
「動くんじゃない。けっこうな値段したものだ、もったいないではないか」
「…てめっ」
宿を一軒貸し切るくらいの無駄金使っておいて今さら。
「まぁ、あと何ケースかは自宅に送ったから…家のバスタブでいくらでも君の肌の手入れができるんだが…」
「ーっ。意味わかんねー!」
言いながらエドワードの抵抗をかわして、マスタングはボトルの中の白濁した物体をエドワードの肌に塗り広めて行く。
「てめーが勝手に一人でスベスベになってろって!ちょ…っどこまで塗る気だよ!」
「全身、のつもりだが?」
「ー!バカだろ!放せ放せ放せ!……ぅわ…っ」
背中から移った手のひらがみぞおちから緩くきれいに筋肉の付いた胸元になで上げられ、エドワードが驚いて体を堅くして声を上げた。
「ん…ちょっ…と!大佐、やめ…っ。」
「ほら、ちゃんと掴まっていないとまた機械鎧が浸かってしまうだろう?」
向かいあって膝に腰掛けさせ、機械鎧の足を岩場に上げさせたマスタングがエドワードの両腕を自分の首に掛けさせる。
「放せ…って!下ろせばいいだろっ。もう上がる!」
「…パックは塗って何分か待つと書いてあったぞ」
「あわっっ。動くな!」
マスタングがボトルの説明書きを確認しようと体を傾けると、体勢を崩しそうになったエドワードが慌ててマスタングの首に抱き着く。
「…あ」
「あ…」
ペタッと、エドワードの泥が塗られた肌がマスタングの肌に当たる。
それは、ボトルに詰められていた冷たさを消し、湯気で緩んだ肌触りがヌル、と滑る。
「…っっ」
エドワードの表情が怒りと感触の気恥ずかしさで真っ赤に染まる。
「…これはこれで…」
「うぎゃ…!」
なかなか…と続くマスタングの口をエドワードが慌てて両手で塞いだ。
「あ…っエドワード!」
「わっっ」
マスタングの口を塞いで掴まる先を無くしたエドワードの腿の辺りまで溶けて流れていた泥が滑って、マスタングが慌てて抱き留めようと腕を伸ばす。
「大…佐…!」
「お…」