『ひっ越し後』

□『0と100』(R高校生)
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「それなりに事情というものがある。わたしくらいの立場になると」
「はいはい、と」
「あ、兄さん…っ」

よ、と勢いよくエドワードが椅子から飛び降りてコートを掴む。

「どこに行くのかね?」
「宿探し!」

隣りを通り過ぎようとしたエドワードの腕を掴み、マスタングが引き止める。
エドワードはクイッと軽く視線を向けて腕を振り払おうとする。

「ここ、使えばいーじゃん。大将」
「そうだよ、兄さん。せっかく…」
「アル、行くぞ」

放さないマスタングの腕をブンブンと振り回してアルフォンスを呼ぶ。

「はーなーせ、よ!」
「何をムキになってる、鋼の。ちょうど報告書の事で話があるし、ここを使えばいいだろう?部屋ならある」
「そりゃあるだろ、無駄遣いしやがって」
「だから…」

だたをこねたような態度にマスタングが顔をしかめる。
その表情に一瞬エドワードが言葉をつまらさせた。

「ここにしようよ。他に見当たらなかったじゃない」
「この街にはここしか宿はないぞー」
「んな…っ」
「そういう事だ」

ポンと頭を叩かれ、エドワードが固まる。

「なら尚更貸し切るんじゃねーよ!」
「うわっ」

グワシッとマスタングのコートの襟首を後ろから掴んでエドワードが叫んだ。
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