『ひっ越し後』
□膝まくら(15歳以上推奨)
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「…おせーんだよ…」
「ああ、申し訳ない。ちょっとこじれた案件が押してしまってね」
あくまで起きていた事は知らせず、エドワードは不満気な目を向ける。
その顔に微かな笑みを浮かべ、ギシッと音を立ててマスタングがベッドに腰を下ろした。
「つーか、何、それ」
手を伸ばされ、それをすかすようにエドワードが机に置かれた紙の束を顎で指す。ああ、とマスタングは机にちょっとだけ視線を向け、背中を丸める。
「…仕事だよ」
「え…っ?」
エドワードが目を見張ってマスタングを見ると、マスタングは眉をハチの字にしてこちらを見ていた。エドワードが怒声をあげるんじゃないかしら、と構えている。
「なんでだよ」
「いや、…明日休暇をいれてもらう代わりに中尉から渡されてね」
「…」
休暇。
エドワードは文句を言う口を閉じた。
マスタングは、どうやら自分のために休みを取ったらしい。
あまり、時間の取れない自分たちのために。
「…あ、そ。じゃあ仕方ねーじゃん」
プイッと、エドワードは顔が赤くなるのを見られないように照明からそっぽを向く。
「エドワード…」
「あ…?」
腕を引かれ、渋々を装って顔を向けると、マスタングが許しを請うようにこちらを伺う目をして見つめていた。
「…」
それ、反則…。
思いながらもエドワードは誘われるようにマスタングの口付けを受ける。
むず…、と体のうずきを感じ、エドワードは身を離す。